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副業先生のバー トップへ 副業先生のバー | Bar Fukugyo-Sensei EPISODE 03 | さやの物語

「魔法は売ってない」

フォロワーより先に、届けたい人を決める日。

🌙
さや 30代・シングルマザー・水商売
🍸
先生 バーのオーナー
🌸
莉子 さやの娘・4歳
📖 読了約18分 🏷 SNS発信・フォロワー・ペルソナ・情報商材
I スマホの中の戦場

ロードマップを受け取った夜から、さやは変わった。

莉子を寝かしつけたあと、スマホを開く。夜の仕事に行く前の、ほんの30分。でも今は違う使い方をしている。

Xのアカウントを作った。

名前は「さや|初対面力コーチ」。プロフィール欄に書いたのは、先生に言われた言葉をそのまま借りたものだ。「初対面の緊張を、武器に変える。営業マン専門コーチ」。

最初の投稿は緊張した。指が震えた。でも、えいっと押した。

いいねが3つついた。フォロワーが見知らぬ誰かから1人増えた。

「始まった」と思った。
II 毎日投稿、14日目

2週間後。さやのフォロワーは、31人だった。

最初の1人からじわじわ増えて、でも最近は止まっている。毎日投稿しているのに。朝、仕事前に1本。夜、帰ってきてから1本。合計28本の投稿。いいねの平均は5つ。リプライはほぼゼロ。

タイムラインを眺めると、フォロワーが何万人もいるアカウントが流れてくる。「フォロワーを増やす5つの方法」「バズるツイートの構造」「1ヶ月で1000人増やした私の戦略」。思わず読んでしまう。「プロフィールを最適化する」「毎日投稿する」「ハッシュタグを使う」。

全部、もうやってる。

気づいたら莉子の夕飯を作りながらも、お風呂に入れながらも、頭の中はずっとXのことだった。寝かしつけながらスマホを確認して、莉子に「ママ、またスマホ見てる」と言われて、「ちょっと待って」と返した。

「ちょっと待って」が、最近口癖になっていた。

III りこが黙った

ある夜、莉子が返事をしなくなった。

夕飯の支度をしながら「今日、幼稚園どうだった?」と聞いた。返事がない。振り返ると、莉子がソファでぬいぐるみを抱えてこちらを見ていた。

🌙
さや
どうしたの? 何か言ってくれないとわからないよ。

無言。莉子はぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。唇をとじたまま、窓の外を見た。

さやはフライパンを置いて、莉子の前にしゃがんだ。

🌙
さや
黙ってたらわからないでしょ。

その言葉を言った瞬間、さやは自分の声が耳に残った。

——黙ってたら、わからない。

スマホを思い出した。28本の投稿。誰にも届かなかった言葉たち。

目の前にいる莉子にすら、伝わらなかった。毎日一緒にいるのに。顔が見えているのに。それなのに、画面の向こうの、顔も名前も知らない誰かに——。

さやはゆっくりと息を吐いた。

🌙
さや
ごめんね、りこ。最近ちゃんと見てなかったね。

莉子はしばらく黙っていたが、やがてぬいぐるみをさやに差し出した。

🌸
莉子
これ、ぽんちゃん。ママにあげる。

さやはぬいぐるみを受け取りながら、今夜のバーのことを考えていた。

IV また、あの場所へ

午前2時。仕事を終えて、さやはいつもの路地に立っていた。暖簾をくぐる。カランと鈴が鳴る。先生は、今夜も一人でグラスを磨いていた。

🌙
さや
また来ました。発信、始めたんです。でも全然増えなくて。
🍸
先生
見てますよ。31人のうちの1人です。

なんだか恥ずかしいような、嬉しいような気持ちになった。

🌙
さや
毎日投稿してるのに、フォロワーが増えないんです。何がいけないと思いますか?
🍸
先生
さやさん、あなたの投稿を見て、あなたに仕事を頼みたいと思った人はいると思いますか?
🌙
さや
……わからないです。
🍸
先生
正直に言いましょう。思わないですよ。

きつい言葉だった。でも、嘘じゃないとわかった。

🌙
さや
今日、娘に気づかされたことがあって。「黙ってたらわからないでしょ」って言ったんです。そしたら、私も同じだと思って。目の前にいる娘にすら伝わらなかった。顔が見えてるのに。それなのに、画面の向こうの知らない誰かに伝わるわけがないって。

先生はしばらく黙っていた。

🍸
先生
それです。あなたの発信に足りないものは、「誰に伝えるか」です。誰でもいい、は誰にも届かない。このバーと同じです。

先生はグラスをカウンターに置いた。

🍸
先生
私がこのバーを開いたとき、来てほしい人を決めました。夜遅くまで働いて、でも誰にも本音を言えない人。そういう人のために、午前0時から開ける。一人でやる。照明も、音楽も、カウンターだけの造りも、全部その人のために決めた。

さやはバーの中を見回した。薄暗い照明。静かなジャズ。確かに、「そういう場所」だと思った。

🍸
先生
誰に向けて書くかを、まず決めてください。次に来るときまでに。

今夜の授業は、それで終わりだった。

V お店の子のインスタ

次の出勤の夜。さやが楽屋で着替えていると、同僚のみくが「見て見て」とスマホを差し出してきた。

🌙
みく
インスタ、最近バズってるんだよね。

画面には、みくのInstagramが開いていた。フォロワーは8,000人。最新の投稿には、いいねが400以上ついている。

🌙
さや
すごい……何投稿してるの?
🌙
みく
んー、なんか日常とか、あと愚痴とか?

さやはスクロールした。

みく|夜のお仕事5年目
今日のお客さん、ずっとスマホ見てた。それって寂しくない?ってなった夜。
♡ 412
みく|夜のお仕事5年目
接客って、相手が話したいときに話せる間を作ることだと思う。沈黙が怖くて喋り続けてたあの頃の私へ。
♡ 387
みく|夜のお仕事5年目
新しいお客さんより、来てくれてる人を大事にしたい。それだけで全部変わった。
♡ 521

いいねが多い投稿は、全部こういう内容だった。テクニックじゃない。ハウツーじゃない。「わかる」と思わず言いたくなるような、誰かの心の中にある言葉。

さやはスマホを返しながら、先生の言葉を思い出した。

——誰に向けて書くかを、まず決めてください。

みくが発信しているのは、「お客さんのことを考えている自分」だ。接客の悩みを持つ人なら、思わず「わかる」と言いたくなる。私が発信すべきは、初対面が怖くて、商談の最初の5分で空回りして、それでも諦めずに頑張っている、あの頃の自分みたいな人への言葉だ。

VI 魔法を買いに行く

でも、その夜の帰り道、さやはポチっていた。

「フォロワーを3ヶ月で1000人増やすSNS攻略マニュアル」。4,980円。先生に「買えばいいじゃないですか」と言われた言葉が頭に残っていた。買えばいい、なら買ってみよう。

PDFは翌朝届いた。80ページ。読み始めた。

マニュアル・第1章
「毎日投稿が基本です」「プロフィールを最適化しましょう」「ハッシュタグは5〜10個つけましょう」「フォロワーが多いアカウントにいいねをしましょう」

さやはため息をついた。全部、知ってた。全部、もうやってた。80ページ読んで、新しいことは何もなかった。最後のページに書いてあったのは、「継続が大事です。諦めずに発信し続けましょう」。

スマホを伏せた。莉子が隣で寝ている。小さな寝息が聞こえる。ぽんちゃんを抱えたまま眠っていた。

「魔法は、なかった」
VII 2度目の来店

3日後の深夜。さやはまたバーの暖簾をくぐった。

🌙
さや
買いました。案の定でした。

先生は少し笑った。笑ったのを見たのは初めてかもしれない。

🍸
先生
それで、誰に向けて書くか、決まりましたか。
🌙
さや
初対面が苦手な、30代の営業マン。商談の最初の5分で緊張して、空回りしてしまう人。みくのインスタを見て気づいたんです。いいねが多い投稿は全部、「わかる」って思える話だった。私が一番「わかる」って言えるのは、初対面の緊張だと思って。
🍸
先生
正しい。では次の話をしましょう。
VIII カクテルと常連の話

先生はシェイカーを取り出した。今夜は何かを作るらしい。

🍸
先生
カクテルを作るとき、材料が全部揃っていても、順番を間違えると台無しになります。SNSも同じです。フォロワーを増やそうとする前に、やることがある。
🌙
さや
なんですか。
🍸
先生
まず、10人と仲良くなること。

さやは首をかしげた。シェイカーに氷を入れる音がした。リキュールを注ぐ。

🍸
先生
このバーにも、常連さんがいます。週に2回来る人。月に1回しか来ないけど、来たら必ず誰かを連れてくる人。そういう人たちがいるから、このバーは続いている。
🌙
さや
フォロワーが多いアカウントにいいねをする、じゃなくて?
🍸
先生
それは、見知らぬ街で看板を出すようなものです。誰かの目に入るかもしれないけど、誰も覚えてくれない。まず、リプライをしてください。相手の投稿を読んで、自分の言葉で返す。毎回。そうすると、相手はあなたを覚える。覚えた人が、あなたのアカウントを見に来る。それが常連になる入口です。

先生はグラスに注いだ。淡いオレンジ色のカクテルだった。さやはグラスを受け取った。

🌙
さや
バーと同じですね。初めて来たお客さんが、いきなり常連にはなれない。
🍸
先生
そうです。何度も顔を合わせて、少しずつ話をして、やっと馴染みになる。オンラインも同じです。
🌙
さや
時間がかかりますね。
🍸
先生
かかります。でも、その10人が次の10人を連れてくる。

さやはカクテルを一口飲んだ。甘くて、少し苦かった。今夜の授業は、それで終わりだった。

IX 自分で気づいたこと

それから1週間、さやはリプライだけをした。

投稿は1日1本。でも毎朝30分、タイムラインを読んで、「わかる」と思った投稿にリプライをした。

営業マンK|3年目
今日の商談、最初の一言が出なかった。また失敗した。
♡ 7

さやはすぐにリプライを送った。「わかります。私も昔、初対面のたびに頭が真っ白になってました」。翌日、そのアカウントがさやの投稿にリプライをくれた。「昨日はありがとうございます。フォローしていいですか」。

フォロワーが32人になった。さやはその投稿をじっと見た。そして、何かひらめいた。

引用してみた。その人の「また失敗した」という投稿を引用して、こう書いた。

さや|初対面力コーチ(引用投稿)
初対面で空回りする人に伝えたいこと。沈黙は武器になります。私が10年かけて気づいたことを、少しずつ書いていきます。
♡ 12

するとその引用投稿に、いいねが12ついた。フォロワーが2人増えた。リプライで関係を作って、引用で自分の言葉を乗せる。誰かに教わったわけじゃない。やってみたら、そうなっていた。

さやはメモに書いた。「リプで絡む。引用で紹介する」。

X 積み上げるだけ

その週の深夜、さやはまたバーに来ていた。

🌙
さや
先生、引用って使ったことありますか。自分でやってみたら、なんか反応よくて。

さやは説明した。リプライで話しかけて、その人の投稿を引用して、自分の言葉を乗せた。

🍸
先生
それは正しいです。リプライで相手の世界に入る。引用で自分の世界に引き込む。両方やることで、繋がりが太くなる。
🌙
さや
でも、誰かに教わったわけじゃないんです。なんとなくやってみたら。
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先生
それでいいです。知識は教えられる。でも、使い方は自分で見つけるしかない。あなたは正しく見つけた。
🌙
さや
フォロワー、38人になりました。
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先生
1週間で7人。多いです。
🌙
さや
7人って、多いんですか。
🍸
先生
あなたの投稿を読んで、フォローした7人は、あなたのことを覚えています。あなたの言葉に共感した人です。そういう7人と、何も考えずに集めた700人と、どちらがいいですか。

さやは黙って考えた。莉子のことを思い出した。毎日一緒にいても、ちゃんと向き合わなければ伝わらなかった。数じゃない。ちゃんと届いているかどうかだ。

🌙
さや
7人の方がいいです。
🍸
先生
それでいい。

さやは財布を取り出した。

🌙
さや
近道はないですね、やっぱり。
🍸
先生
ない。でも、間違った方向に全力で走るより、正しい方向にゆっくり歩くほうが、早くたどり着く。

暖簾をくぐる。夜風が冷たかった。さやはスマホを開いた。タイムラインに、初対面の営業マンっぽいアカウントが投稿していた。「今週も商談ゼロ。自分には向いてないのかな」。

さやは迷わずリプライした。「向いてないんじゃなくて、入口が違うだけだと思います。最初の5分、何をしていますか?」

送信ボタンを押した。フォロワーは、まだ38人だった。でも今夜も、「届いた気がする」と思いながら、さやは夜道を歩いた。

発信を始めて最初にぶつかるのが「フォロワーが増えない」という壁です。でも、フォロワーの数は結果であって、目的ではない。

目の前の1人に届いたかどうか。その積み重ねが、やがて10人になり、100人になる。魔法はありません。ただ、正しい方向に歩き続けること。それだけです。

NEXT ACTION

あなたの「誰に届けるか」を
一緒に決めませんか。

さやのように、発信を始めたけど誰にも届かない。
そう感じているなら、まず「誰に向けて書くか」を設計することから始めましょう。

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