副業先生

「みんなも稼ぎたいかー!」その瞬間、私は帰った。副業セミナーの心理操作を解剖する。

その副業、本物ですか?— Vol.01

会場の3割が即決。私がアフィリエイトセミナーで「逃げた」理由。

Facebookで広告を見かけた。「ちょっと怪しいかも」と思いながらも、どんな手口なのか気になって申し込んだ。会場の1/3がその場で契約した。私は途中で帰った。あの場で何が起きていたか、整理しておきたい。

そもそも最初から引っかかりがあった

MLMや情報商材の勧誘は、普通は知人経由で来る。「いい話があるんだけど」と友人に声をかけられるのが典型的な流れ。それがSNS広告で見知らぬ人を集めているというのが、入口からおかしかった。

それでも「どんな手口を使うのか見てみよう」という気持ちで参加した。

会場に着いてから帰るまで

現場
20〜30人規模の普通の会議室。参加者の年齢も性別もバラバラで、「副業で稼ぎたい」という一点だけで集まったような顔ぶれだった。最初の雰囲気は静かだったが、話が進むにつれて会場の熱量は上がっていった。

最初に登壇したのは「成りあがった人たち」だった

有名なアフィリエイターが壇上に立った。見た目は「どう見ても冴えないおじさん」という感じで、それが逆に効いていた。この人が底辺から月収100万を超えるまでの話を語る。続いて、普通の主婦が副業で生活を変えた話。どちらも「特別な才能があったわけじゃない」という文脈で語られる。

代表も出てきて、きらきらした海外旅行やチームのビジョンを語った。このあたりで会場の空気はだいぶ変わっていた。「自分にもできるかもしれない」という気持ちが、参加者の中に育ち始めているのがわかった。

「仲間」の写真が出てきたとき

次に役員らしき人が登場した。参加者と同じ立場から始めたという社員の写真をスライドで見せながら話す。「名古屋支部の営業発表会」「大阪支部の忘年会」「東京支部の勉強会」。全国に仲間がいる、みんな頑張っている、自分も同じ道を歩めるという演出。

「僕も頑張っています」という話の後、会場全体に向かってこう叫んだ。

「みんなも稼ぎたいかー!」
「おー!」

この瞬間にドン引きして、そそくさと帰った。

後ろのドアに並んだテーブル

帰り際に見えたのだが、会場の後方にテーブルが並んでいた。「契約する方はあちらで」という案内で、3万・5万・9万の3プランが用意されていた。金額によってレベニューシェアの比率が変わる仕組みで、「今日来てくれた方には特別料金をご案内」という文句がついていた。

残った参加者のうち、1/3はその場で契約した。1/3は帰り、1/3は迷っていた。

契約した人たちを愚かだとは思わない。それほど、あの場の設計は完璧で、「現状を変えたい」という真剣な気持ちに深く入り込むものだったから。むしろ真面目で、必死で、何かを変えようとしていた人たちだったと思う。

あの場で何が起きていたか

心理操作の構造
1
「普通の人が成功した話」で「自分にもできる」という感情を作る。論理より先に感情を動かす。
2
全国の支部・仲間の写真で「すでに多くの人が動いている」という社会的証明を作る。
3
「おー!」の掛け声で会場を一体化させる。断ることへの心理的ハードルを上げる。
4
「今日だけの特別料金」で考える時間を奪う。
5
後ろのドアとテーブルで、契約への流れを物理的に作る。

そしてもう一点。金額によってレベニューが変わる仕組みは、「教材を買う」という体裁でありながら、高いプランを買うほど紹介報酬が増える構造になっている。アフィリエイトの看板を掲げながら、中身はMLMと同じ仕組みだった。

MLMをSNS広告で見知らぬ人に売るというのは、そもそも矛盾している。通常のMLMは「友人・知人ネットワーク」を活用するものだから。その矛盾が最初の違和感の正体だったと、後から気づいた。

「スキルが残るか」という境界線

副業を選ぶときに、一つだけ問いかけてほしいことがある。その作業を1年続けて、他でも使えるスキルが身につくのか。それとも、その組織の中でしか通用しない「勧誘術」だけが残るのか。

本物の副業は、やめた後も自分の中に何かが残る。スキルでも、実績でも、顧客でも。やめた瞬間に収入がゼロになり、手元に何も残らないものは、副業とは呼びにくい。

見抜くためのポイント

確認しておきたいこと
収益の源泉が「自分のスキル・作業への対価」か「他者を勧誘した報酬」か
金額によって紹介報酬の比率が変わる仕組みになっていないか
「今日だけ」「残りわずか」という言葉で判断を急がせていないか
やめたときに自分にスキルや資産が残るか
SNS広告で見知らぬ人を集めている勧誘ではないか

あの場で途中退席できたのは、最初から疑いを持って入ったからだと思う。何も知らずに行っていたら、あの熱量と巧みな設計に流されていた可能性は十分あった。知識を持って入ることが、唯一の防御になる。

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副業先生

Fukugyo-Sensei

20歳で起業。英語を武器に通訳・翻訳で独立し、上海・香港・東京を渡り歩く。会員制バー10年経営、大企業コンサル複数社。48種の副業を構造から分析して気づいたこと──本質がわかれば、方法は選べる。副業を「運任せにしない人」へ届けるメディアです。

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