【ビジネス事例 Lesson 109】Hasbro──玩具の王者がIPカンパニーへ転換した戦略と副業への教訓

前回のLesson 108では、老舗アパレルブランドが時代の変化に乗り遅れた際に「ブランド価値を守りながらデジタル転換」を図った事例を学びました。
キーフレーズ:「過去の栄光は資産にも負債にもなる」
今回は「Hasbro」です。玩具という”モノ”を売る会社が、なぜエンターテインメント企業に変身しようとしたのか。その戦略と痛みを副業目線で読み解きます。
🏢会社紹介:玩具業界の巨人・Hasbro
Hasbro(ハズブロ)は1923年にロードアイランド州で創業した、世界最大級の玩具・ボードゲームメーカーです。モノポリー、クルー、トランスフォーマー、マイリトルポニー、ネーフ、ダンジョンズ&ドラゴンズなど、世界中で愛される1,500以上のIP(知的財産)を保有しています。
長年にわたり競合のMattelと「玩具業界の二強」として君臨してきましたが、2010年代後半から玩具市場の縮小・デジタル化の波に直面。2019年にはエンターテインメント企業Entertainment One(eOne)を約40億ドルで買収し、映像コンテンツ事業へ大胆に軸足を移しました。しかし2023年には同事業を売却するという劇的な方向転換も行い、今なお変革の途上にある企業です。
| 約58億ドル2023年度売上高 | 1,500+保有IPブランド数 | 創業100年1923年ロードアイランド創業 |
⚙️問題:「玩具が売れない時代」に直面した三重苦
Hasbroが直面した問題は単純な「売上不振」ではありません。構造的な三重苦でした。
- ✕玩具市場の縮小:子どもがゲームやYouTubeに時間を奪われ、フィジカルな玩具の購買が激減。米国玩具市場は2022〜2023年で前年比マイナス成長が続いた。
- ✕eOne買収の重荷:40億ドルをかけて買収した映像事業が期待通りの利益を生まず、2023年に13億ドル未満でSony Music Entertainmentへ売却。巨額の損失計上。
- ✕IPの収益化不足:1,500超のブランドを持ちながら、その多くが玩具販売にしか活用されていない「休眠IP」状態。デジタルゲーム・映像・ライセンスでの収益化が遅れた。
“我々は玩具会社ではない。IPカンパニーだ。
問題はそのIPで何をするか、だ。”
── Chris Cocks CEO(2022年就任後の戦略説明会より)
🧭対策①:「Blueprint 2.0」──選択と集中のIP戦略
2022年にCEOに就任したChris Cocksが打ち出したのが「Blueprint 2.0」と呼ばれる新戦略です。1,500以上あるIPをすべて育てようとするのではなく、「Franchise Brands」「Challenger Brands」「Licensing Brands」の3層に分類し、投資を集中させました。
❌ 旧:全IP均等運用1,500超のIPすべてに人員・予算を分散。ヒットと埋もれが混在し、どれも中途半端な展開に。大きなIPでも映像・ゲーム化が遅れ、機会損失が続いた。 |
VS |
✅ 新:3層IP選択集中モノポリー・D&D・トランスフォーマーなど超主力を「Franchise」に指定。映像・ゲーム・体験型で多角展開。残りはライセンス収入に特化し、運営コストを削減。 |
副業でも同じ。「とりあえず全部やる」は最も危険な戦略です。自分のスキル・コンテンツを棚卸しし、「稼ぎ頭」「育成中」「切り捨て」の3層に分類する視点で考えてみてください。
🧠対策②:デジタルゲーム×IPの掛け算で「体験」を売る
Hasbroが注目したのは、デジタルゲームとIPの組み合わせです。2023年にリリースされた映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ:アウトローたちの誇り』はグローバルで約2億ドルを超える興行収入を記録し、D&Dブランドの認知を急拡大させました。
さらにWizards of the Coast(Magic: The Gatheringを展開するHasbro傘下)は、デジタルゲーム事業を拡大。「Baldur’s Gate 3」(D&DのIP使用ゲーム)が2023年のGame of the Yearを受賞し、D&D関連グッズ・書籍・ボードゲームの売上が急増。「映像やゲームがIP需要を作り、グッズが収益化する」好循環が生まれました。
“Baldur’s Gate 3の大ヒットはD&D IPの価値を世界中に証明した。我々のブランドはゲームの中でも生きている。”
── Hasbro 2023年度アニュアルレポートより
🎲
ボードゲームモノポリー・クルー・リスクなど定番を映像化・アプリ化し新世代へリーチ |
🎮
デジタルゲームWizards of the Coastを通じてD&D・MTGのデジタル展開を加速 |
🎬
映像×グッズ映画・ドラマが「広告」となりグッズ販売を自然に誘引するループ設計 |
副業でも同じ。あなたのブログ・SNS発信・動画は「広告」ではなく「コンテンツ」として機能させてください。コンテンツが信頼を生み、信頼がサービス購入・紹介につながるという視点で考えてみてください。
🚀対策③:コスト構造の大胆な見直しと「身軽な企業」への転換
eOneの売却は「失敗の後処理」だけではありません。Hasbroはこれを機に年間3億ドル以上のコスト削減を目標に掲げ、2023〜2024年にかけて全従業員の約20%にあたる約1,100人をレイオフ。製造・物流の外部委託を進め、自社はIP管理・クリエイティブ・ライセンス交渉に集中する「軽量経営モデル」へシフトしました。
① eOne映像部門の売却──ノンコア事業を切り離し、固定費・人件費を大幅圧縮
② 製造のアウトソーシング強化──玩具の製造・物流を外部委託し、在庫リスクを低減
③ ライセンス収入の最大化──自社製品に頼らず、他社がHasbroのIPを使って商品を作る「ライセンスフィー」を主要収益源に育成
副業でも同じ。「自分でゼロから全部やる」のをやめ、テンプレート・外注・ツールで自動化できるものは任せる。あなたの時間は「コア業務(あなたにしかできないこと)」に集中させるという視点で考えてみてください。
✅解決:改革の成果と「IPカンパニー」への歩み
2023年は売上・利益ともに厳しい年でしたが、コスト削減と選択集中の効果は数字に現れ始めています。特にWizards of the CoastとD&D部門は好調を維持し、デジタル・ライセンス収入が成長ドライバーとなっています。
| 3億ドル超年間コスト削減目標(2024年達成見込み) | 約2億ドルD&D映画の世界興行収入(2023年) | GOTY受賞Baldur’s Gate 3(D&D IP使用、2023年) |
💡教訓:Hasbroから学ぶ4つの副業原則
「何を売るか」より「何を持っているか」を問え
Hasbroは玩具を売る会社ではなく「IPを活用する会社」と自己定義を変えることで活路を開きました。副業でも同様です。「ブログを書いている」ではなく「〇〇の専門知識というIPを持っている」と考えると、収益化の選択肢が一気に広がります。
- ▸ スキル・経験・知識はすべて「IP」と捉える
- ▸ 講座・電子書籍・コンサルなど複数形態で展開できる
あなたの「当たり前」が誰かにとっての価値ある知識です。
「失敗した投資」を引きずらずに撤退する勇気
40億ドルで買収したeOneを13億ドルで売却する決断は、誰がどう見ても「大失敗」です。しかしHasbroはそこに固執せず、損切りして前進しました。副業でも「時間をかけたから続けなきゃ」というサンクコスト思考は最大の罠。
- ▸ うまくいかない副業案件・方向性は早めに見切る
- ▸ 撤退の判断基準をあらかじめ決めておく
損切りは敗北ではなく、リソースの再投資です。
コンテンツが「広告」になる設計を目指す
D&D映画やBaldur’s Gate 3は「広告費ゼロ」でD&Dグッズの需要を爆発させました。「見てもらう→欲しくなる→買う」という流れをコンテンツで自然に作った結果です。副業においても、発信した記事・動画・SNSが直接的な告知ではなく「価値あるコンテンツ」として機能するとき、売上は自然についてきます。
- ▸ 役に立つ情報発信が最大の集客ツール
- ▸ 「売り込み」より「世界観の提示」が購買を生む
あなたの発信は広告ではなく、価値ある「作品」にしてください。
ライセンス収入=「寝ている間も稼ぐ仕組み」を作る
Hasbroが目指す「他社が自社IPを使ってくれるライセンスモデル」は、副業における不労所得・ストック収入の概念と同じです。コンテンツ・テンプレート・デジタル商品・アフィリエイトなど、一度作ったものが継続的に収益を生む仕組みが理想形です。
- ▸ 電子書籍・note記事・デジタルテンプレートは典型的なストック資産
- ▸ 一度作ってずっと売れる仕組みへの投資を優先する
時間を売り続けるのをやめ、仕組みに働いてもらってください。
📋 今日からできるHasbro式 副業改善チェックリスト
自分のIP棚卸しをする
持っているスキル・経験・実績をすべて書き出し、「稼ぎ頭」「育成中」「切り捨て」の3層に分類してみる。
「続けるか・撤退するか」の判断基準を設ける
3ヶ月で月X万円稼げなければ方向転換、など具体的な数値基準を今月中に決める。
コンテンツを1本「広告ではなく価値提供」として書く
読んだ人が「役に立った」と感じる記事・動画・投稿を1本仕上げ、公開する。
ストック収入源を1つ作る計画を立てる
電子書籍・デジタルテンプレート・有料noteなど、一度作れば繰り返し収益を生む商品の企画を書き出す。
🔗 まとめ:Hasbroが築いたのは「IPを中心に回る生態系」
玩具を売る会社から「IPカンパニー」への転換。その道は簡単ではなく、40億ドルの失敗投資と数千人のレイオフという痛みを伴いました。しかしHasbroは「モノを売る」ことへの固執を捨て、「価値あるIPを多様な形で体験させる」ことへとビジネスモデルを再設計しました。
副業も同じです。「作業を売る」ことから「価値・知識・スキルというIPを活用する」思考に切り替えたとき、収益の天井が一気に高くなります。あなたにはすでにIPがある。あとはそれをどう展開するかを設計するだけです。
あなたは「作業者」ではなく「IPホルダー」として副業を設計してください。















