【ビジネス事例 Lesson 108】Mattel──「バービー」IPを多展開し死の淵から蘇った玩具帝国の戦略

前回のLesson 107では、LEGOが「ファン共創」と「デジタル×リアル融合」によってマンネリ打破と業績V字回復を遂げた事例を学びました。
キーフレーズ:「顧客をクリエイターに変えると、ブランドが自走し始める」
今回は「Mattel」です。LEGOが”作る体験”で再生したとすれば、Mattelは自社の持つ”IP(キャラクター資産)”を映画・ゲーム・ライセンスへと広げることで業績を回復させました。副業でもコンテンツやノウハウという”見えない財産”を複数の場所で展開できます。
🏢会社紹介:Mattelとはどんな会社か
Mattel(マテル)は1945年にカリフォルニア州で創業した世界最大級の玩具メーカーです。本社はカリフォルニア州エルセグンドにあり、ナスダック上場(ティッカー:MAT)。2024年度の年間売上高は約50億ドル(約7,500億円)規模を誇ります。
代表的なIPはBarbie(バービー)・Hot Wheels(ホットウィールズ)・Fisher-Price(フィッシャープライス)・UNO・Masters of the Universe(ヒーマン)など多岐にわたり、約170カ国で販売しています。従業員数は約32,000人(2024年時点)。
| 1945年創業年(79年の歴史) | 約$50億2024年度 年間売上高 | 170カ国販売展開国数 |
⚙️問題:なぜMattelは危機に陥ったのか
2010年代後半、Mattelは深刻な経営危機に直面します。かつての栄光は急速に色あせ、2017〜2018年にかけて業績は底を打ちました。具体的には2017年に玩具小売最大手のトイザらス(Toys”R”Us)が経営破綻し、主要販路を一気に失います。さらに競合他社との価格競争激化とデジタルゲームへの需要シフトが重なりました。
- ✕主要販路トイザらス破綻により、年間約5億ドル規模の売上が消滅
- ✕2017年純損失は約10億ドル超。株価は2017〜2018年にかけて約60%急落
- ✕スマートフォンゲーム・YouTubeなどデジタルエンタメに子どもの時間を奪われ、物理玩具の市場縮小が加速
- ✕バービーへの「非現実的な体型・価値観」批判が続き、若年層ユーザーが離反。ブランドイメージが時代遅れに
- ✕CEOが2年足らずで交代するなど経営陣の不安定が続き、組織の方向性が定まらない状態に
“我々には世界最高のIPがある。問題はそれをおもちゃの箱の中にしか使っていなかったことだ。”
── Ynon Kreiz(イノン・クライツ)CEO、就任時のインタビューより(2018年)
🧭対策①:「IP企業」への戦略的転換
2018年にCEOに就任したイノン・クライツは、ネットフリックスとDreamWorksのエグゼクティブ出身。彼が打ち出した最大の戦略転換は「Mattelをおもちゃ会社からIP中心のエンタメ企業へ再定義する」というものでした。
❌ 旧モデル:おもちゃ販売中心IPをおもちゃという「箱」の中だけで消費。収益源は小売店経由の製品販売のみ。バービーは”人形”として販売されるだけで、文化的影響力が収益に直結しない。 |
VS |
✅ 新モデル:IP展開企業バービーやホットウィールズを映画・ドラマ・ゲーム・ライセンス商品など複数メディアへ展開。IPが「メディア」として機能し、玩具販売を後押しする循環モデルへ。 |
2018年にMattel Filmsを設立。バービー・ホットウィールズ・マスターズ・オブ・ザ・ユニバース・UNOなど複数IPの映画化プロジェクトを同時進行。ウォーナー・ブラザーズとの提携により製作リスクを分散しながら、IPの認知度・憧れを世界規模で再点火する戦略を取りました。
副業でも同じ。あなたのブログ記事・YouTube動画・セミナー資料は「IP」です。それを1つの場所だけで使わず、SNS・音声配信・電子書籍・コンサルへと多展開することで収益の複線化が生まれます。
🧠対策②:バービーの「インクルーシブ化」とブランド刷新
「非現実的な体型」「白人中心」「職業ステレオタイプ」などの批判を正面から受け止め、Mattelは2016年頃からバービーの多様化・インクルーシブ化を断行。2023年の映画公開に向けてそれがピークに達しました。
👗
体型の多様化「カーヴィー」「トール」「プティット」など複数の体型ラインを展開。現実の多様な体型を反映 |
🌍
人種・文化の多様化アジア系・黒人・ヒスパニック系など35以上の肌の色・瞳の色・ヘアスタイルを提供 |
♿
障がいの表現補聴器を付けたバービー・車椅子に乗ったバービーなど、障がいを持つ子どもも自分を投影できるラインを展開 |
“バービーは常に、女の子が何にでもなれるというメッセージを伝えてきた。今の時代にそのメッセージを伝えるには、すべての女の子が自分自身をバービーに見出せなければならない。”
── リサ・マッナイト(Lisa McKnight)、Mattel バービー部門グローバル責任者
副業でも同じ。批判をただ無視するか、それとも”改善の素材”として取り込むかで未来が変わります。「需要の変化を批判から読み取る力」こそ、長期的なブランド維持の要です。
🚀対策③:映画「バービー」公開とマーケティング革命
2023年7月に公開されたウォーナー・ブラザーズ製作の映画「Barbie(監督:グレタ・ガーウィグ、主演:マーゴット・ロビー)」は、興行収入世界累計14億4,000万ドル超という空前の大ヒット。映画公開前後のMattelの仕掛けは教科書に載るべきマーケティング戦略でした。
映画公開に合わせてAirbnb・XBOX・NYX・プログレッシブ保険・Coldstone・Zara・H&Mなど100社以上がバービーとのコラボ商品・キャンペーンを展開。「ピンク一色に染まる世界」という体験型マーケティングが全SNSで爆発的に拡散。Mattelは映画制作費の大部分をコラボパートナーから回収する革新的なモデルを実現しました。
副業でも同じ。自分1人で集客しようとせず、「コラボ・相互紹介・アフィリエイトパートナー」という視点を持つことで、コストをほぼかけずに爆発的なリーチを得ることができます。
✅解決:V字回復の結果数値
一連の戦略転換の結果、Mattelは明確な業績回復軌道に乗りました。2023年のバービー映画効果は数値としても如実に現れています。
| $14.4億バービー映画 世界興行収入(2023年) | +40%2023年Q3 バービー関連玩具売上前年比増加率 | $5.44億2023年 調整後営業利益(黒字回復) |
さらにMattel Films は今後もホットウィールズ映画(J・J・エイブラムス製作)、マスターズ・オブ・ザ・ユニバース(ネットフリックス)などのプロジェクトを進行中。IPポートフォリオを継続的に映像化することで、玩具販売との相乗効果サイクルを恒常的に生み出す構造を確立しつつあります。
💡教訓:副業・ビジネスへの応用
あなたの「IP」を特定せよ
Mattelが「バービー」というIPの価値を再評価したように、あなた自身にも必ず「強み・ノウハウ・コンテンツ」という形のIPがあります。まずそれを棚卸しすることが出発点です。
- ▸ 過去に作ったブログ記事・資料・SNS投稿を「IP一覧」として書き出してみる
- ▸ 「これだけ知識がある」というジャンルを1つ特定する
資産は眠らせず、動かすことで初めて価値になる。
1つのコンテンツを「多メディア展開」せよ
バービーが映画・ゲーム・ライセンス・SNSで同時展開されたように、1つのノウハウをブログ・音声・動画・セミナー・電子書籍で多展開することで、露出×収益機会が掛け算で増えます。
- ▸ ブログ1本 → SNS要約投稿3本 → YouTube解説動画 → メルマガ → 電子書籍の1章
- ▸ 1度作ったコンテンツを「リパーパシング(再利用)」する習慣を持つ
コンテンツは1度作って終わりではない。形を変えて何度でも使え。
批判を「市場調査」として活用せよ
Mattelはバービーへの批判を正面から受け止め、インクルーシブ化という形で商品に反映。これが映画の社会的共感を生みました。SNSのネガティブコメントも「顧客の本音」として読み解けば、次の商品・サービスの改善ヒントになります。
- ▸ 低評価レビュー・批判コメントを月1回読み返す習慣をつける
- ▸ 「なぜそう感じたか」を深掘りし、改善ポイントを3つ書き出す
批判は敵ではない。次のヒット商品のヒントだ。
コラボで「集客コスト」をゼロにせよ
Mattelはバービー映画公開にあたり、100社以上のブランドをコラボパートナーにすることで宣伝費を実質ゼロ以下に圧縮しました。副業でも「相互紹介・ゲスト出演・共同ウェビナー」を活用することで、費用をかけずに新規リーチが得られます。
- ▸ 同ジャンルで競合しない副業仲間を3人リストアップし、相互紹介を打診する
- ▸ ポッドキャスト・YouTube・Voicyへのゲスト出演でゼロコスト集客を実現する
1人で戦うな。コラボを設計することが最速の集客だ。
📋 今日からできるMattel式 副業改善
IP棚卸しをする(今日中)
過去に作ったブログ・動画・資料・SNS投稿をリスト化し、「再利用できるもの」を5つ選ぶ
コンテンツのリパーパシング計画を立てる(今週中)
既存ブログ記事1本をSNS3投稿・メルマガ1通・音声1本に変換する計画を作る
批判コメントを読み返し、改善点を書き出す(今週中)
過去の低評価・批判コメント3件を読み、それぞれ「改善アクション」を1つずつ書く
コラボ候補を3人リストアップする(今月中)
ジャンルが近くて競合しない副業仲間・インフルエンサー3人を探し、相互紹介を打診してみる
🔗 まとめ:Mattelが築いたのは「IPが自走する収益構造」
Mattelの復活は「偶然のヒット」ではありません。CEO交代→IP企業への戦略再定義→ブランドのインクルーシブ化→映画×コラボというマーケティング革命、という一連の意図的な構造変革の結果です。バービーという79年のIPを「再定義」し、映画・ライセンス・コラボという複数の収益レバーに接続したことで、玩具販売だけに依存しない強靭なビジネスモデルが生まれました。
副業においても、自分の持つコンテンツやノウハウという「IP」を1カ所にしか置かないのは機会損失です。多展開・コラボ・批判の活用という3つのMattel式思考を、今日から自分のビジネスに取り入れてみましょう。
眠っている資産を動かせ。あなたのIPはまだ全力で走っていない。















