【ビジネス事例シリーズ Lesson 107】「Hormel(SPAM)」── 軍用食からソウルフードへ、意図しない市場の獲得

Hormel(SPAM)──
軍用食からソウルフードへ、
意図しない市場の獲得
1937年生まれの缶詰が、ハワイ・沖縄・韓国のソウルフードになるまで。「狙った成功」ではなく「偶然を育てた」ことが世界80カ国を制した。
🔗 SPAM公式サイト(https://www.spam.com/)Lesson 106|Guinness──「本物の持続性」を学びました。
265年変えなかった品質が「Split the G」TikTokバズで若者に再発見され、「黒い=重い」誤解を事実で覆し、Guinness 0.0で新市場を開拓した。「流行を追わなかったから、本物として残った」ことの力でした。
キーフレーズ:「本物を作り続けた者だけが、再発見される日を迎えられる。」
「世界初のハム缶詰」── 1891年ミネソタから世界80カ国へ
Hormelは1891年、ジョージ・A・ホーメルがミネソタ州オースティンで豚肉販売会社として創業した。
1926年に世界初のハムの缶詰を販売し、1937年7月5日、創業者の息子ジェイ・C・ホーメルが開発した「SPAM」ブランドが誕生した。
名前の由来は公募で選ばれた(正確な意味は今も非公開)。
発売初年度のマーケットシェアは18%──しかし誰も、この缶詰が世界の食文化を変えるとは思っていなかった。
缶詰として誕生
世界中へ
ソウルフードへ
累計80億食
1937年生まれの缶詰が今も現役
世界中の胃袋を満たした
配当貴族銘柄として知られる
問題:「軍用食」というイメージと本国での低評価
SPAMが抱えていた矛盾は、「世界に広まったのに、本国アメリカでは低く見られている」という逆説だ。
- 「安い肉の代替品」というアメリカ本土での評価──「貧しい人の食べ物」「質の低い加工肉」というイメージが定着。釣りの餌や防災備蓄のイメージが強く、積極的に食べるものではなかった。
- 「SPAM=迷惑メール」というネガティブ連想──1990年代にインターネットの「迷惑メール」がSPAMと呼ばれるようになり、ブランド名がネガティブワードとして世界に広まった。
- 缶詰カテゴリー全体の地位低下──食の多様化・生鮮食品へのシフトで、缶詰全体が「古い・不健康」というイメージに。加工肉への健康不安も重なった。
- 「軍用食」という出自の両義性──戦地での普及というルーツが、特定の地域では「支配の象徴」として複雑な感情を生む一方、他の地域では「豊かさの象徴」として受け入れられるという分断があった。
「狙った市場では低評価だった。
しかし狙っていない市場でソウルフードになった。」
対策①:「米軍駐留地での普及」── 意図しない市場が本物のファンを生んだ
SPAMの最大の成功は、Hormelが意図して作ったものではない。
第二次世界大戦中、米軍の配給食として太平洋・欧州の戦地へ大量に供給されたことが、すべての始まりだった。
・生活の一部になった──配給食として日常に入り込み、その地域の食文化と融合した。「外から来たもの」ではなく「自分たちの食べ物」になった
・世代を超えて継承された──親から子へ、「家庭の味」として引き継がれたことで、感情的な絆が生まれた
・ローカルフードに進化した──スパムむすびもポーク玉子おにぎりも、SPAMをそのまま食べるのではなく現地の食文化と融合した新しい料理として生まれ変わった
「本来のターゲット」以外に使っている人・想定外の使い方をしている人を見逃していませんか?
「意図しない顧客」のほうが、時に深いファンになる。顧客のレビュー・SNSのタグ・問い合わせ内容から「想定外の使われ方」を探し、そこを本気で育てましょう。
対策②:「現地の食文化への融合」── 押しつけずに溶け込む
Hormelの2つ目の戦略は、「輸入品」から「地元の食材」へ変身するローカライズだ。
「SPAMという製品を売る」のではなく、「その地域の食卓に溶け込む」ことを目指した。
・「沖縄の食文化を創造する」をミッションに掲げて設立
・「輸入品を売る」ではなく「沖縄の食材メーカー」として地域に根ざす
・ポーク玉子おにぎりがコンビニ・空港・観光地で定番化──「沖縄みやげ」としての地位を獲得
・外から来たものが「ここにしかないもの」になった逆転の成功例
「自分のサービスをそのまま届ける」だけになっていませんか?
「相手の文化・文脈・言葉に合わせて届ける」ことで、受け入れられ方が変わります。同じ価値でも「その人の世界観に溶け込んだ伝え方」をするだけで、刺さり方が格段に変わります。
対策③:「缶詰の価値再発見」と「多角化」── 危機が証明した本質的価値
Hormelの3つ目の戦略は、非常事態が証明した「缶詰の本質的価値」を活かす経営と、SPAMだけに依存しない多角化だ。
「ハワイの人々は台風が来ると、
水・トイレットペーパー・SPAMを買いに走る。」
2020年のコロナ禍では、「長期保存可能」「簡単に調理できる」という缶詰の本質的価値が世界規模で再評価された。
「古い」と思われていたものが、非常事態で「必需品」に変わった。
「今は需要がない」と思っているサービスに、実は埋もれた価値がありませんか?
非常事態・変化の時代に「本質的な価値が再発見される」ことがあります。「今は売れない」ではなく「まだ必要とされるタイミングが来ていない」と捉え、価値を磨き続けることが大切です。
成功の方程式:「偶然を育てた」ことが80カ国を制した
積み重なった結果
安定した経営基盤
ソウルフードの規模
Hormelの戦略を整理すると、こうなる。
① 米軍駐留地での普及──意図していなかった「ハワイ・沖縄・韓国」という市場を本気で育てたことが、80カ国展開の礎になった
② 現地食文化への融合──フレーバー展開・現地法人設立・地域限定商品で「輸入品」から「地元の食材」へ変身した
③ 缶詰の価値再発見+多角化──コロナ禍での需要急増に対応しながら、Skippy・Muscle Milkなどの買収で「缶詰会社」から「総合食品会社」へ進化した
教訓:Hormelが教えてくれた「偶然を活かす力」
「意図しない顧客」こそ、最も熱いファンになる
スパムむすびもポーク玉子おにぎりも、Hormelが仕掛けたものではない。現地の人々が自分たちの文化に溶け込ませた結果だ。「自分で選んだ文化」は、受け身で受け取ったものより深く根づく。副業でも、想定外の顧客が最も熱い口コミを生むことがある。
- 今の顧客の購入理由・使い方を改めてリサーチしてみる
- 「想定と違う使い方」をしている顧客にインタビューする
- その「想定外の使い方」に向けた発信・商品を一つ作る
「融合」は「押しつけ」より強い
SPAMはSPAMのまま食べてもらおうとしなかった。スパムむすびになり、プデチゲの具材になり、テリヤキ味になった。「自分の商品・サービスを変えずに売る」より「相手の文化に溶け込む形に変える」ほうが、深く根づく。
- 今のターゲットの「文化・言葉・価値観」を改めて調べる
- サービスの「伝え方・見せ方・名前」を相手の言葉に翻訳してみる
- 「自分の世界観を押しつける」より「相手の世界観に混ざる」を意識する
「古い価値」は非常事態で再発見される
「缶詰は古い」と思われていたSPAMが、コロナ禍で生活必需品として爆発的に需要が伸びた。今「時代遅れ」と感じているスキル・サービスでも、時代の変化や非常事態が「本質的な価値」を再評価させることがある。
- 「今は使われていない自分のスキル・経験」を書き出す
- それが「どんな変化が起きたら必要とされるか」を想像する
- 「今はニッチでも、未来に需要が爆発するもの」を一つ温めておく
「一点集中」から「面展開」へ──コアを守りながら多角化する
SPAMというコアを守りながら、Skippy・Muscle Milk・MegaMexを買収し「総合食品会社」へ進化した。51年連続増配という安定は「一つの製品への依存」ではなく「多角化による分散」が支えている。
- 今の副業の「コア(最も信頼されているもの)」を確認する
- そのコアを活かしながら広げられる「隣接領域」を一つ書く
- 「一つのプラットフォーム・顧客・収益源」への依存を見直す
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🔗 まとめ:Hormelが証明したのは「偶然を育てる力」だ
軍用食として戦地に送り込まれたSPAMが、ハワイでスパムむすびになり、沖縄でポーク玉子おにぎりになり、韓国でプデチゲの具材になった。
Hormelはそれを意図しなかった。しかし「偶然の市場」を見逃さず、本気で育てた。
押しつけずに溶け込み、現地法人を作り、フレーバーを現地化し、51年連続増配という安定を手に入れた。
「狙った成功」だけが成功ではない。「偶然の成功」を見逃さず、育てる。
あなたの副業の「スパムむすび」は何ですか?
Lesson 108:Mattel(マテル)
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