【ビジネス事例 Lesson 111】Unilever──400ブランドを捨てる勇気と育てる戦略で世界トップへ

前回のLesson 110では、P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)の「ブランドマネジメント」と「消費者インサイトを起点にした製品開発」を学びました。
キーフレーズ:「消費者の声を聞かずして、ヒット商品は生まれない」
今回は「Unilever」です。P&Gと並ぶ世界最大規模の消費財メーカーが、なぜブランドを「増やす」のではなく「絞る」判断をし、それがいかに巨大な成果をもたらしたかを深掘りします。
🏢会社紹介:Unileverとは何者か
Unilever(ユニリーバ)は、1929年にイギリス・オランダで設立された世界最大規模の消費財メーカーです。本社はロンドンとロッテルダムの両拠点を持ち、現在はロンドン(英国)に統一登記されています。190か国以上で事業を展開し、従業員数は約12万8,000人(2023年末時点)。
主要ブランドにはDove(ダヴ)・Knorr(クノール)・Lipton(リプトン)・Hellmann’s(ヘルマンズ)・Rexona(レクソナ)・Ben & Jerry’s(ベン&ジェリーズ)など、世界中の家庭で使われる製品が並びます。食品・飲料・ホームケア・パーソナルケアの4カテゴリに分類され、特にパーソナルケアと食品が収益の両輪です。
| 604億€2023年度売上高 | 190+事業展開国数 | 400→30ブランド数(削減前→目標) |
⚙️問題:400ブランドを抱えた”肥大化の罠”
2000年代初頭、Unileverは実に1,600以上のブランドを世界中に保有していました。M&A(合併・買収)による急成長戦略の結果、収益のほとんどは上位少数のブランドに偏り、残りの大多数は利益貢献度が極めて低い「ゾンビブランド」状態に陥っていました。
- ✕売上の80%が全体の400ブランド中わずか上位ブランドに集中し、残りは管理コストだけが膨らむ一方だった
- ✕マーケティング予算が分散し、主力ブランドへの投資が手薄になる「資源の共食い」が起きていた
- ✕ESG・サステナビリティへの対応が後手に回り、環境意識の高い若年層消費者からの支持を失い始めていた
- ✕新興市場(アジア・アフリカ)でローカル競合が台頭し、価格競争に巻き込まれ収益率が悪化していた
“We had too many brands that were neither big enough to matter, nor small enough to be nimble.”
── Unilever元CEO ポール・ポルマン氏(在任2009〜2019年)
🧭対策①:「Path to Growth」──捨てることで強くなる
2000年、Unileverは「Path to Growth(成長への道筋)」という5か年戦略を発表。最大の柱は1,600以上のブランドを400に絞り込むという大胆なポートフォリオ整理でした。
❌ 旧:拡大戦略M&Aで際限なくブランドを増やし続ける。管理コスト増大、ブランドアイデンティティ希薄化、マーケ予算の分散。 |
VS |
✅ 新:選択と集中売却・廃止で数を絞り、資源を主力ブランドに集中投資。ブランド力・利益率が劇的に向上。 |
具体的にはSlim-Fast・Bertolli・ベスト・フーズなどの大型ブランドを売却。一方で、年間10億ユーロ超の売上を持つ「€1Bnブランド」の育成に注力しました。現在DoveやKnorrなどがこのカテゴリに入ります。
副業でも同じ。「あれもこれも」と副業の種類や発信テーマを増やしすぎると、どれも中途半端になります。「自分の看板ブランド=専門テーマ」を1〜2つに絞ることで、信頼と収益が集中します。
🧠対策②:サステナビリティを「コスト」でなく「戦略」へ
2010年、ポール・ポルマンCEOのもとで「Unilever Sustainable Living Plan(USLP)」を発表。2020年までに①事業規模を2倍、②環境負荷を半減、③10億人の生活改善、という3つの目標を同時に追求する野心的なビジョンでした。
🌱
環境目標製品の温室効果ガスを半減・プラスチック包装の100%リサイクル可能化を目指す |
🤝
社会目標サプライチェーン全体で公正な労働環境を確保。農家・小規模事業者への支援強化 |
📈
事業目標「Sustainable Living Brands」は他ブランドの2倍速で成長し、全売上の7割を超えた |
Dove(リアルビューティーキャンペーン)やBen & Jerry’s(社会正義への積極的な発言)がその代表例。「良いことをする企業から買いたい」という消費者心理を正面から捉え、ブランドの差別化と売上増を同時に達成しました。
副業でも同じ。「なぜ自分はこの副業をしているのか」という軸(パーパス)を発信することで、単なる売り込みではなく共感を生む発信になります。読者は「この人から買いたい」と感じるようになります。
🚀対策③:新興市場×デジタル化で「次の10億人」へ
Unileverの売上の約58%(2023年)はアジア・アフリカ・ラテンアメリカなどの新興市場から生まれています。先進国市場の飽和を見越し、購買力が伸びる新興国の低〜中所得層を早期に取り込む「ボトム・オブ・ザ・ピラミッド(BOP)」戦略を実行しました。
インドでは少量・低価格の「サシェ(小袋)パッケージ」を展開し、1回分のシャンプーや洗剤を数円で販売。農村部の消費者を顧客化することに成功。現在インドのHindustan Unileverはムンバイ証券取引所に上場し、独立した巨大企業として機能しています。デジタル分野ではeコマースへの移行を加速し、2023年のオンライン売上比率は約15%に達しています。
副業でも同じ。「高単価の完成品だけ」ではなく、入門者向けの低価格コンテンツ(無料PDF・500円noteなど)を用意することで、新規顧客を獲得しやすくなります。まず入口を広くとることが、長期的な顧客拡大につながります。
✅解決:戦略の成果が数字に表れる
「選択と集中」「サステナビリティ経営」「新興市場開拓」の3つの戦略が相互に連動し、Unileverは長期的な成長軌道を描くことに成功しました。直近2023年の決算では、売上高成長率(underlying sales growth)は7.0%を達成。特にパーソナルケア部門と新興市場が牽引しています。
| 7.0%2023年実質売上成長率 | 58%新興市場売上比率 | 16.7%2023年営業利益率 |
“Brands with purpose grow. Companies with purpose last. People with purpose thrive.”
── ポール・ポルマン(元Unilever CEO)著書『Net Positive』より
💡教訓:Unileverから学ぶ4つの副業戦略
「やめること」を決めると、残ったものが輝く
Unileverは1,600のブランドを400に削減し、収益を集中させました。副業も同様に、収益に貢献していないSNSチャンネル・商品ラインナップを思い切って手放すことが成長の起点になります。
- ▸ 月に1度、自分の副業タスクの「費用対効果」を棚卸しする
- ▸ 収益ゼロが3か月続いた活動はいったん休止する勇気を持つ
「選択」こそが最大の戦略だ。
パーパス(目的意識)が最強のブランド差別化になる
DoveやBen & Jerry’sは「なぜ存在するか」を明確にすることで、広告なしでも語られ続けるブランドになりました。副業でも「なぜこれをやっているか」の発信が、フォロワーやファンとの深い信頼関係を生みます。
- ▸ プロフィール文に「誰の・どんな悩みを解決したいか」を一言で書く
- ▸ 発信内容の3割は「自分の理念や背景」にあてる
売り込まなくても選ばれる人になるには、パーパスが必要だ。
「入口の広さ」が長期的な収益を生む価格設計
新興国向けの小袋パッケージ戦略は、まず体験してもらうことで長期顧客化を実現しました。副業でも無料コンテンツ→低価格商品→高単価サービスへと段階的に誘導するファネル設計が有効です。
- ▸ 無料プレゼント(PDF・メルマガ)→ 1,000〜3,000円の入門商品→ 高単価コンサルの順に設計する
- ▸ 入口商品は「買って損したと思わせない」クオリティにこだわる
まず「試せる仕組み」をつくることが、ファン化の第一歩だ。
数字で進捗を測り、戦略を修正し続ける習慣
UnileverはUSLPで具体的な数値目標を公開し、毎年進捗レポートを出し続けました。目標を公言することで組織全体が同じ方向を向き、外部からの信頼も高まります。副業でも月次で数字を振り返ることが成長の速度を上げます。
- ▸ 月次KPI(フォロワー数・売上・問い合わせ数)を記録し前月比を確認する
- ▸ 目標をSNSや仲間に宣言することで「やり抜く力」を高める
測らないものは、改善できない。
📋 今日からできるUnilever式 副業改善チェックリスト
副業の「棚卸し」をする
現在取り組んでいる副業タスク・商品・発信チャネルをすべて書き出し、収益・時間・満足度の3軸で評価する
自分の「パーパス文」を書く
「私は〇〇な人が△△という悩みを解決できるよう、□□を提供する」という一文を作り、プロフィールに入れる
低価格の入口商品を1つ作る
無料PDFや500〜980円の入門コンテンツを用意し、高単価サービスへの導線を設計する
月次レビューの習慣をつける
毎月末に売上・フォロワー・問い合わせ数を記録し、翌月の改善点を1つ決める。継続が複利成長を生む
🔗 まとめ:Unileverが築いたのは「捨てる文化」と「目的ある成長」
1,600→400というブランド削減、サステナビリティを事業の核に据えたUSLP、新興市場への低価格・高浸透戦略──これら3つは「選択と集中」「目的意識」「入口の広さ」という副業に直結する普遍的な原則です。Unileverは世界最大の消費財メーカーでありながら、常に「何をやめるか」を問い続けた企業でもありました。
副業を育てるうえで大切なのは、新しいことを始めることではなく、今あるリソースを正しい場所に集中させることです。あなたの副業のどこに「ゾンビブランド」が眠っていませんか?
捨てる勇気が、次のステージへの扉を開く。
















