副業先生

【ビジネス事例シリーズ Lesson 66】「カインズ」── IT小売業宣言で躍進するホームセンターの王者

BUSINESS CASE SERIES ─ LESSON 66

カインズ──
「退屈なホームセンター」を
IT×DIYで最も面白い小売に変えた男

群馬の服地店から始まったベイシアグループの中核が、売上5,423億円・HC業界首位に立つまで

🔗 カインズ公式サイト(https://www.cainz.com/)
📌 前回のおさらい

前回のLesson 65では、ニトリから「”仕組み”で価格を下げた者が、最も長く勝ち続ける本質」を学びました。

製造物流IT小売業という垂直統合モデルで中間マージンをゼロにし、「お、ねだん以上。」を構造的に実現。

数値で経営し、隣接市場に踏み出すことの重要性を知りました。


🔨

群馬の服地店が生んだ「1兆円グループ」の中核

1958年、群馬県伊勢崎市。土屋嘉雄が服地専門店「いせや」を創業した。
既製服が普及して服地の需要が減ると、食品、住関連と扱う品目を広げていった。
1978年に「いせやホームセンター」を開始。1989年に法人化し「カインズ」が誕生。

現在、カインズは売上5,423億円でホームセンター業界売上No.1
29都道府県に257店舗を展開し、年間レジ通過客数は1億4,477万人

親グループのベイシアグループは、カインズ、ワークマン、ベイシアなど31社でグループ売上1兆円超
「それぞれの会社が、自分の道で尖る」──グループシナジーを押しつけず、各社の個性を伸ばす「ハリネズミ経営」が、ワークマンやカインズという個性的な企業を生み出した。

どこにでもあるような会社が多くてもあまり意味がない。
どうせやるなら「ここしかできないこと」をやれる会社がたくさんある方がいい。

── 土屋哲雄(ワークマン専務・ベイシアグループ)

⚙️

問題:「ホームセンター」は退屈な業態だった

ホームセンターは長年、「安くて便利だが、退屈な店」だった。
品ぞろえは多いが、ワクワクしない。必要な時にしか行かない。「目的なく行きたい店」ではなかった。

  • 売場面積は平均1万㎡、大型店は2万㎡近く。商品数は最大12万アイテム。広すぎて欲しい商品が見つからない
  • 店頭の問い合わせの8割が「この商品はどこにあるか」。接客のほとんどが”道案内”に消える
  • Amazonやコンビニとの価格・利便性競争が激化。「わざわざホームセンターに行く理由」が薄れつつある
  • 業界全体がM&Aで統合が進む中、規模の競争だけでは差別化できない

ホームセンターの敵は、別のホームセンターではない。
「あの店に行く必要がない」と思われること。
──カインズの戦いは、「退屈」を壊すことから始まった。


🔧

対策①:「3つの創業」── SPA×ITで業態そのものを変える

カインズの強さは、「3つの創業」を通じて自らの業態を更新し続けてきたこと。

🏗️
第1創業

多店舗展開と大型化でスケールメリット追求。土屋嘉雄がHC事業を確立

🏭
第2創業

2007年「SPA宣言」。オリジナル商品を自社開発・製造。売上の約4割がPB商品に

💻
第3創業

2018年「IT小売業宣言」。3年で100億円投資、デジタル人材100人採用。プロ経営者・高家正行がCEOに

第3創業で就任した高家正行CEOは、三井銀行→A.T.カーニー→ミスミ社長を経たプロ経営者。
「我々が進めているのはDXではなくCX(コーポレートトランスフォーメーション)、全社改革だ」と宣言し、表参道に「CAINZ INNOVATION HUB」を開設。デジタル人材の受け皿を作った。

副業でも同じ。

「今のやり方」に満足した瞬間、衰退が始まる。カインズは3度、自ら業態を壊して再構築した。あなたの副業も「第2創業」「第3創業」が必要。スキルの追加、ツールの刷新、サービス設計の見直し──定期的に「自分を壊す」勇気を持とう。


📱

対策②:「Find in CAINZ」── 最大の不満をデジタルで解消

カインズのDXの起点は、たった1つの小さな機能だった。

🔴 従来のホームセンター

商品を探すのに時間がかかる

店員に聞いても場所の説明が難しい

問い合わせの8割が「商品の場所」

接客時間の大半が”道案内”

VS
🟢 カインズのデジタル体験

アプリで商品検索→棚の位置まで表示

店内測位で自分の現在地もリアルタイム表示

「探す」ストレスが消え、買い物体験が向上

店員は”道案内”から”提案型接客”へ転換

「Find in CAINZ」──商品を検索すると、店舗のどの棚にあるかまで表示される機能。
さらにカインズアプリ(573万会員)に店内測位機能を搭載し、223店舗に展開済み。
お客様は自分の現在地と商品の場所を地図上でリアルタイムに確認できる。

この「小さな改善」が、接客の質を劇的に変えた。
店員が「場所を教える作業」から解放され、「暮らしを提案する接客」に時間を使えるようになったのだ。

副業でも同じ。

お客様の「最大の不満」を1つ特定し、それをデジタルやツールで解消する。大きな改革ではなく「小さな1つの不満解消」が、体験を劇的に変える。あなたの副業でお客様が最もストレスを感じているポイントはどこか?そこにテクノロジーを当てよう。


🤝

対策③:「ハンズ買収×くみまち構想」── 都市と地域、両方を取る

カインズの第3の打ち手は、「都市」と「地域」の両方を押さえる戦略。

2つの拡張戦略

① 東急ハンズ(現ハンズ)買収(2022年)──都心部に店舗を持つハンズを取得。カインズのSPA機能(オリジナル商品開発力)・デジタル基盤・物流網と、ハンズの目利き力・編集力を掛け合わせ、「新たなDIY文化の共創」を目指す

② くみまち構想──店舗を地域のハブとして活用。防災拠点、地域産業振興(くみまちマルシェ)、環境教育、サーキュラーエコノミー──ホームセンターを「暮らしのインフラ」に進化させる

さらに「C’z PRO」(プロ向け専門店7店舗)、「Style Factory」(都市型小型店3店舗)、24時間無人店舗「CAINZ Mobile Store」(2025年12月)など、フォーマットの多様化も進む。

ホームセンターは「モノを売る場所」ではない。
「くらしをDIYする場所」──
カインズは、業態の定義そのものを書き換えている。

副業でも同じ。

「自分のサービスの定義」を広げてみよう。「Web制作をする人」ではなく「お客様のビジネスのデジタル面をDIYする人」。定義を広げると、提供できる価値の範囲が広がり、単価もリピートも上がる。「○○をする人」から「○○の体験を作る人」へ。


解決:「退屈な業態」をNo.1に変えた

5,423億円
売上高(HC業界首位)
257店舗
29都道府県に展開
1.45億人
年間レジ通過客数

「3つの創業」で業態を更新し続け、「Find in CAINZ」で最大の不満を解消し、「ハンズ買収×くみまち構想」で都市と地域の両方を押さえた。

売上約4割を占めるオリジナル商品の開発力、グッドデザイン賞を毎年受賞する商品力、573万人のアプリ会員基盤──「退屈なホームセンター」は、「くらしをDIYする場所」へと進化した。
ブランドコンセプト「くらしに、ららら。」が示す通り、カインズは「楽しさ」を売っている。


💡

教訓:副業に活かせる「カインズの本質」

カインズの本質は、“「退屈な業態」を壊して再定義した者が、業界のルールを変える”こと。

定期的に「自分を壊す」── 第2、第3の創業を仕掛ける

カインズは3度、自らの業態を壊して再構築した。規模→SPA→ITと進化し続けた。

あなたの副業でも、

  • 1年に1回、「今のサービスを白紙に戻すなら、何を作るか」を考える時間を持つ
  • スキルの追加、ツールの刷新、価格設計の見直し──「今のまま」は停滞の始まり
  • 「創業者精神」を持ち続ける。安定した瞬間に「次の創業」を考える

最も危険なのは「うまくいっている」と感じた瞬間。そこが次の創業の出発点。

「最大の不満」を1つ特定し、デジタルで解消する

カインズは「商品が見つからない」という不満を1つの機能で解消し、接客の質を変えた。

あなたの副業でも、

  • お客様に「最もストレスを感じるポイント」を聞く。答えは必ず1つに集約される
  • その1つを、ツール・テンプレート・自動化で解消する。大改革は不要。小さな1つでいい
  • 「小さな不満解消」が、体験全体の印象を劇的に変える。それがDXの本質

DXとは「全部をデジタル化する」ことではない。「最大の1つの不満を消す」こと。

「サービスの定義」を広げる

カインズは「モノを売る店」から「くらしをDIYする場所」へ、定義そのものを書き換えた。

あなたの副業でも、

  • 「○○をする人」から「○○の体験を作る人」へ。定義を広げると提供価値が広がる
  • ライター→「言葉で事業を前に進める人」。デザイナー→「視覚で顧客体験を設計する人」
  • 定義が広がると、単価も上がり、リピートも増え、紹介も増える

「自分が何者か」の定義を変えた瞬間、見える世界が変わる。


📋 今日からできるカインズ式 副業改善

「自分の副業の第3創業」を考える

30分だけ時間を取り、「今のサービスを白紙に戻すなら、何を作るか」を紙に書き出しましょう。今のスキルに「IT」「デジタル」「自動化」を掛け合わせたら、どんな新しい価値が生まれるか──「次の自分」を設計する時間です。

お客様の「最大の不満」を1つ特定する

直近のお客様3人に「一番ストレスだったポイント」を聞いてみましょう。回答、やり取りの手間、待ち時間──答えは必ず共通項に集約されます。その1つをツールやテンプレートで解消するだけで、満足度が劇的に上がります。

自分のサービスの「定義」を書き換える

今の肩書きや自己紹介を1つ書き換えましょう。「○○をする人」→「○○で○○を実現する人」に。この小さな言い換えが、提供できる価値の範囲を広げ、お客様との会話を変え、単価を上げるきっかけになります。


🔗 まとめ:カインズが築いたのは「業態を壊して再定義する力」

1958年の群馬の服地店から始まったベイシアグループの中核として、
カインズは3つの創業を経てHC業界首位に立った。
SPA化でオリジナル商品力を、IT化でデジタル顧客体験を、
ハンズ買収で都市展開を、くみまち構想で地域ハブを構築。

カインズの本質は、
“「退屈な業態」を壊して再定義した者が、業界のルールを変える”こと。

副業においても同じ。
定期的に自分を壊し、最大の不満を解消し、サービスの定義を広げた人が、
「くらしに、ららら。」のように、楽しくて選ばれる存在になれます。


🔔 次回予告

次回は「コメリ」。

新潟発、農業と地方に徹底特化したホームセンター。
なぜコメリは都市型チェーンとは真逆の「小商圏・多店舗戦略」で1,200店超を達成し、地方で圧倒的に支持されるのか?を解説します。

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📘 Lesson 67:コメリ を読む👇

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副業先生

Fukugyo-Sensei

20歳で起業。英語を武器に通訳・翻訳で独立し、上海・香港・東京を渡り歩く。会員制バー10年経営、大企業コンサル複数社。48種の副業を構造から分析して気づいたこと──本質がわかれば、方法は選べる。副業を「運任せにしない人」へ届けるメディアです。

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