花王──
よきモノづくり、
消費者の声が導く135年
長瀬富郎の「正道を歩む」精神が、日本最大の日用品帝国を築いた
🔗 花王株式会社 公式サイト(https://www.kao.com/jp/)前回のLesson 36では、ヤクルトから「信念を届ける経営の本質」を学びました。
代田稔は「予防医学」の信念を乳酸菌飲料に込め、ヤクルトレディという独自モデルで世界40カ国に届けた。
キーフレーズ──「科学に裏打ちされた信念を、届ける仕組みで広げる」
「正道を歩む」── 長瀬富郎の原点
1863年、岐阜県中津川市に生まれた長瀬富郎。
22歳で上京し、コメ相場で無一文になるなど苦節を経て、
1887年、日本橋馬喰町に洋小間物商「長瀬商店」を開業した。
当時の日本には、質の悪い国産石鹸と、高価な輸入石鹸しかなかった。
富郎は自分の店で米国製の高級石鹸がよく売れる一方、粗悪な国産品が安くても売れない現実を見つめた。
「顔も洗える、品質のよい国産石鹸を作りたい」──。
石鹸職人・村田亀太郎と共に開発に没頭。
1890年、ついに高級化粧石鹸「花王石鹸」を完成させた。
「花王」の名は、化粧石鹸が「顔洗い」と呼ばれていたことから「カオ(顔)」に由来する。
桐箱に3個入り35銭──そば1杯が1銭の時代に、1個約12銭の超高級品。
だが富郎は薬学博士の分析証明書を同封し、品質を「科学で証明」した。
日本初の「品質保証」であった。
天祐ハ常ニ道ヲ正シテ待ツベシ。
(幸運は、誠実に正しい道を歩む者のもとに訪れる)
富郎は結核のため48歳で亡くなったが、この遺言は「正道を歩む」として花王ウェイに刻まれ、
135年経った今も全社員の行動指針であり続けている。
問題:「日用品」で勝ち続ける難しさ
石鹸から始まった花王は、洗剤、化粧品、ヘルスケアへと事業を拡大していった。
しかし、日用品というカテゴリには固有の難しさがある。
- 差別化が困難──洗剤も石鹸も「どれも同じ」に見えやすい。コモディティ化のリスク
- 価格競争の罠──日用品は価格に敏感。安売り競争に巻き込まれやすい
- 消費者の無関心──毎日使うからこそ「当たり前」になり、ブランドへの意識が薄れる
- グローバル強者の壁──P&G、ユニリーバという世界的巨人との直接対決
消費者の声に耳を傾け、その先にある「言葉にならないニーズ」を形にする。
それが花王の”よきモノづくり”の本質です。
対策①:「消費者起点」── 顧客の声を経営の中心に置く
花王の最大の武器は、「消費者起点」という徹底した顧客理解である。
これは創業時から一貫して変わらない。
「花王エコーシステム」── 年間12万件超の消費者の声をデータベース化
1978年から稼働する情報システム。消費者からの問い合わせ・相談・クレームをすべてデータ化し、商品開発から基礎研究まで全社で共有する仕組み。
1934年には「家事科学研究所」を設立。
科学的で合理的な家事を研究し、講習会や座談会で消費者と直接対話した。
これは現代の「カスタマーリサーチ」の原型──90年前から花王はやっていた。
「消費者・顧客を最もよく知る企業になる」──これが花王のビジョン。
商品を作ってから売るのではなく、消費者の声を聴いてから作る。
この順番が、花王の全てを決めている。
副業でも同じ。「自分が売りたいもの」ではなく、「顧客が求めているもの」を先に知ること。花王は年間12万件の声を聴き続けている。あなたの副業でも、SNSのコメント、問い合わせメール、レビューを「宝の山」として活用しよう。
対策②:「アタック革命」── 技術で潜在ニーズを掘り起こす
1987年、花王は日用品の歴史を変える商品を生み出した。
世界初のコンパクト型衣料用洗剤「アタック」である。
1箱4.1kg──重くてかさばる
お年寄りや子連れには持ち帰りが一苦労
木綿衣料の汚れが落ちにくい
1箱1.5kg──片手で持てるコンパクト
使用量が1/4でも洗浄力は向上
バイオ酵素で木綿汚れもスッキリ
アタックの開発は、消費者の「洗剤は重い」「汚れが落ちない」という不満から始まった。
アルカリ性でも働くバイオ酵素を発見し、少量でも高い洗浄力を実現する製剤化技術を開発。
発売翌年には衣料用洗剤市場で単独トップに躍り出た。
1990年代には、日本のほとんどの洗剤がコンパクト型に切り替わった。
花王は「業界標準」そのものを書き換えたのだ。
消費者の「不満」の中にこそ、
次のヒット商品の種がある。
副業でも同じ。「もっとこうだったらいいのに」という顧客の小さな不満に注目しよう。花王はアタックで「重い洗剤」という当たり前を壊した。あなたの業界にも「当たり前だけど不便なこと」が必ずある。それを見つけた者が勝つ。
対策③:「稼ぐ力の改革」── ROIC経営で不振事業を刷新
花王は2019年から5期連続で最終減益という苦境に陥った。
中国化粧品事業の低迷、原材料高騰、コロナ禍の打撃──。
しかし花王は「正道を歩む」精神で構造改革に踏み切った。
ROIC(投下資本利益率)を軸にした事業ポートフォリオの見直し
不振事業の売却・撤退を決断。ペットケア事業の譲渡、茶カテキン飲料「ヘルシア」や飲料事業の売却、中国での紙おむつ生産終了──。「選択と集中」で稼ぐ力を取り戻した。
2024年12月期、花王は6期ぶりの最終増益を達成。
売上高は前期比6.3%増の約1兆6,284億円、営業利益は2.4倍の1,466億円。
「コアブランド」への集中投資と構造改革が実を結んだ。
副業でも同じ。「やめる勇気」も大切な経営判断。花王はヘルシアやペットケアなど、かつてのヒット事業でも収益性が見込めなければ手放した。あなたの副業でも「続けていること」を棚卸しし、本当に稼げるものに集中しよう。
解決:「よきモノづくり」が築いた、日用品の王国
花王は、23歳の青年が開いた小さな洋小間物商から始まった。
「品質のよい国産石鹸を作りたい」という想いが「花王石鹸」を生み、
消費者の声を聴き続ける姿勢が「アタック」を生み、
「稼ぐ力の改革」で6期ぶりの増益を勝ち取った。
洗剤で国内1位、化粧品で国内2位、トイレタリーで圧倒的なシェア。
利益の44%を広告に投じた富郎のマーケティングミックスの精神は、
135年後の今も、花王のDNAとして生き続けている。
教訓:副業に活かせる「花王の本質」
花王の本質は、“消費者の声を聴き、科学で応え、正道で届ける”こと。
これは副業・個人ビジネスにもそのまま応用できる。
「消費者起点」── 声を聴く仕組みを作れ
花王は年間12万件超の声をデータベース化し、全社で共有している。顧客の声を「仕組みとして」拾い上げることがすべての出発点。
- SNSのコメント、DM、レビューを定期的に分析する
- 「不満」と「称賛」を分けてリスト化する
- 声を聴くだけでなく、商品改善に反映させるサイクルを回す
「聴く者が、作る者を超える。」
「当たり前を疑え」── 不満の中にヒットの種がある
アタックは「洗剤は重くて当たり前」を壊した。業界の常識を疑うことが、イノベーションの第一歩。
- あなたの業界で「当たり前」になっていることをリストアップする
- 「なぜそうなっているのか」を問い直す
- その不便を技術やアイデアで解消できないか考える
「常識の裏に、チャンスが隠れている。」
「品質で語れ」── 安売りせず、価値で勝負する
富郎は利益の44%を広告に投じ、品質を科学で証明する戦略を取った。安さではなく、価値で選ばれることを目指した。
- 価格で勝負すると、いつか体力が尽きる
- 品質・信頼・実績を「見える化」して伝える
- 「高いけど、選ばれる」ポジションを築く
「正道を歩む者に、安売りは不要。」
「やめる勇気」── 選択と集中で稼ぐ力を取り戻す
花王はヘルシアやペットケアなど、かつての成功事業でも撤退を決断した。
- 「がんばっているけど儲からない」事業を棚卸しする
- 感情ではなく、数字で判断する
- 手放すことで、本当に集中すべきものが見えてくる
「やめることは、負けではない。次に集中するための決断だ。」
📋 今日からできる花王式 副業改善
🔗 まとめ:花王が築いたのは、「声を聴き、正道で応える経営」
23歳の青年が「品質のよい国産石鹸」への想いから始め、
消費者の声を聴く仕組みを135年磨き続け、
アタックで業界標準を書き換え、
5期連続減益の苦境を構造改革で乗り越えた。
「天祐ハ常ニ道ヲ正シテ待ツベシ」──それが花王の不変の軸。
消費者の声を聴き、
正道で応え、品質で語る人が、
長く、強く、選ばれ続ける。
次回は「カルビー」。
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