【ビジネス事例シリーズ Lesson 65】「ニトリ」── 36期連続増収増益が途切れた巨人の再挑戦

ニトリ──
「お、ねだん以上。」の裏側にある
製造・物流・IT・小売の”全部やる”戦略
札幌の小さな家具店が、売上9,289億円・1,048店舗の帝国を築けた本質
🔗 ニトリ公式サイト(https://www.nitori-net.jp/)前回のLesson 64では、ケンタッキーフライドチキンから「”商品”ではなく”文化”を作った者が50年勝ち続ける本質」を学びました。
65歳のカーネルが始めたフランチャイズは「クリスマス=KFC」という日本だけの文化を創造した。
「使われる場面」をセットで提案し、ハレとケの両輪を回すことの重要性を知りました。
札幌の家具屋が、日本の暮らしを変えた
1967年、北海道札幌市。
似鳥昭雄が23歳で「似鳥家具店」を開業した。
当初は売れない日々が続き、倒産寸前まで追い込まれた。
転機は1972年の米国視察。
アメリカの家庭を見て衝撃を受けた──広いリビング、美しいインテリア、それが「庶民の暮らし」だった。
「日本の住まいを、アメリカのように豊かにしたい」。
この原体験が、ニトリの全てを決めた。
以来50年超。
ニトリは売上9,289億円、国内外1,048店舗の家具・インテリア帝国に成長した。
海外は11カ国・地域に213店舗。台湾、中国、東南アジア、インドへ急拡大中。
2032年の目標は3,000店舗・売上3兆円。
日本の住まいを豊かにする。
そのためには、安くて良いものを作り続けなければならない。
安くて良いものを作るには、全部自分でやるしかない。
問題:「安くて良い家具」はなぜ実現が難しいのか
「安くて良いもの」──言葉にすれば簡単だが、家具業界でこれを実現するのは極めて困難だった。
- 家具はメーカー→問屋→小売の多層流通。中間マージンが積み重なり、消費者価格が膨らむ
- 品質を上げるとコストが上がる。コストを下げると品質が落ちる。「安くて良い」は二律背反
- IKEAという世界最強の価格破壊者が日本に参入。「安い家具」だけでは差別化できない
- 2024年3月期、36期連続増収増益の記録が途切れた。円安で海外生産コストが急騰し利益を圧迫
「安い」と「良い」は本来、両立しない。
それを両立させるには、流通の常識そのものを壊すしかなかった。
対策①:「製造物流IT小売業」── 全部、自分でやる
ニトリが「お、ねだん以上。」を実現できる最大の理由は、「製造物流IT小売業」というビジネスモデル。
アパレルのSPA(ユニクロ型)を家具で実現した、世界でもまれな垂直統合モデル。
製造
海外に自社工場。製品の9割超を海外で生産。原材料の調達から品質管理まで自社で完結
物流
自社物流子会社「ホームロジスティクス」。ダブル連結トラック運行。名古屋DC等を新設
小売
1,048店舗+通販。問屋を通さず自社で直接販売。中間マージンをゼロにして価格を下げる
メーカー→問屋→小売という流通構造を全て自社でつなげた。
中間マージンがゼロになるから、同じ品質でも価格を半分以下にできる。
これが「お、ねだん以上。」の正体。安さの源泉は「努力」ではなく「構造」にある。
副業でも同じ。
「安くします」と価格を下げるのは簡単だが、それでは利益が消える。価格を下げても利益を残すには「構造」を変えること。仲介プラットフォームを通さず直接取引する、テンプレートで作業時間を半分にする──「努力」ではなく「仕組み」でコストを下げよう。
対策②:「数値で経営する」── 感覚を排除した意思決定
ニトリのもう一つの強さは、「数値で経営する」文化。
似鳥昭雄会長は徹底した数値主義者であり、全ての意思決定を数字で行う。
🔴 感覚経営
「この商品は売れそう」で仕入れる
「この立地は良さそう」で出店する
在庫管理は経験と勘に依存
為替変動に無防備
🟢 ニトリの数値経営
売上・客数・客単価を日次で全店分析
出店は商圏分析と投資回収シミュレーション
ITで在庫・物流を一元管理
為替予測を経営判断に組み込む
似鳥会長は為替予測でも知られ、「1ドル=130円を想定」と決算で毎回発表する。
円安が1円進むと利益が年20億円圧迫される構造のニトリにとって、為替は生命線。
36期連続増収増益が途切れた2024年3月期も、原因は「売れなかった」のではなく「円安」だった。
副業でも同じ。
「なんとなく忙しい」「なんとなく稼げている」──この「なんとなく」が最も危険。時給を計算する、案件ごとの利益率を出す、月次で収支を記録する。数値で把握できていないものは改善できない。まず「自分の時給」を正確に知ることから始めよう。
対策③:「3,000店・3兆円」── 国内完成、海外で倍にする
ニトリの次の賭けは海外展開。
国内782店舗は飽和に近づいており、成長の軸を海外に移す。
現在の海外展開:11カ国・地域 213店舗──台湾68店、中国100店、マレーシア12店、シンガポール4店、タイ10店、香港3店、韓国5店、ベトナム3店、フィリピン4店、インドネシア3店、インド1店
2024年12月にインド初出店(ムンバイ)。世界最大の人口を持つ市場への橋頭堡を確立
島忠を約2,100億円でTOB買収(2021年)。ホームセンター市場にも参入し、「住まいのすべて」をカバーする体制を構築
家電を「第4の柱」として育成。機能とデザインを両立したPB家電で、家具・インテリアに続く収益源を開拓中
「安くて良いもの」を日本だけに届ける時代は終わった。
ニトリは今、アジア11カ国の暮らしを変えようとしている。
──「お、ねだん以上。」を、世界の共通語にするために。
副業でも同じ。
国内市場(今の顧客基盤)が飽和してきたら、「隣接市場」に踏み出そう。既存スキルを別の業界に適用する、日本語だけでなく英語でもサービスを提供する、個人向けから法人向けに広げる──「今の強み」を新しい市場に持ち込むことが、次の成長エンジンになる。
解決:「仕組み」で日本一になった家具帝国
「製造物流IT小売業」で中間マージンをゼロにし、「数値経営」で感覚を排除し、「海外展開」で次の成長を仕掛ける。
2025年3月期の売上は9,289億円(前年比3.7%増)。経常利益は1,262億円。
36期連続増収増益の記録は途切れたが、似鳥会長は「ふがいない決算で申し訳ない。今年来年をぜひ見ていただきたい」と語った。
80歳を超えてなお「わくわくしている」と言い切る創業者の目は、3,000店・3兆円の未来を見ている。
教訓:副業に活かせる「ニトリの本質」
ニトリの本質は、“「仕組み」で価格を下げた者が、最も長く勝ち続ける”こと。
「努力」ではなく「構造」でコストを下げる
ニトリは「安く売る努力」ではなく、「安くても利益が出る構造」を作った。
あなたの副業でも、
- 仲介を減らして直接取引する。プラットフォーム手数料20%を自社集客に置き換えるだけで利益が変わる
- テンプレート、自動化ツール、チェックリスト──「仕組み」で作業時間を半分にする
- 「頑張って安くする」は長続きしない。「構造的に安くできる」が本物の競争力
価格競争の勝者は、最も安い人ではない。最も効率的な構造を持つ人。
「数値」で経営する──感覚を排除する
ニトリは全ての意思決定を数値で行い、36期連続増収増益を達成した。
あなたの副業でも、
- まず「自分の時給」を計算する。月収÷実労働時間=時給。これが全ての基準になる
- 案件ごとの「利益率」を把握する。売上が大きくても利益率が低い案件に時間を取られていないか
- 月次で収支を記録する。数値で把握できていないものは、改善できない
「なんとなく」を排除した人だけが、本当に稼げるようになる。
「今の強み」を「隣の市場」に持ち込む
ニトリは家具の強みをアジア11カ国に、そしてホームセンター・家電市場に広げている。
あなたの副業でも、
- 今のスキルを「別の業界」に適用する。Web制作のスキルは飲食店にも、不動産にも、医療にも使える
- 「個人向け」から「法人向け」に広げる。同じスキルでも法人向けは単価が2〜5倍になる
- 「日本語だけ」から「英語でも提供」に広げる。市場が一気に10倍になる
成長の壁にぶつかったら、「もっと頑張る」ではなく「隣に行く」。
📋 今日からできるニトリ式 副業改善
「中間コスト」を1つ削減する
今使っているプラットフォーム、ツール、外注先を見直し、「中間マージン」を1つ減らしましょう。直接取引に切り替える、無料ツールに置き換える、テンプレート化する──構造的にコストを下げることで、価格を下げても利益は残ります。
「自分の時給」を正確に計算する
先月の副業収入と実労働時間を正確に記録し、時給を計算しましょう。時給1,000円の案件と時給5,000円の案件が混在していませんか?低時給の仕事を減らし、高時給の仕事に集中する──数値が見えれば、判断は自動的に変わります。
「隣接市場」を1つリサーチする
今のスキルが活かせる「別の業界」「別の顧客層」「別の地域」を1つ調べましょう。同じスキルでも、届ける市場を変えるだけで単価も需要も変わります。「今の市場でもっと頑張る」前に、「隣の市場」を覗いてみてください。
🔗 まとめ:ニトリが築いたのは「仕組みで”安くて良い”を実現するモデル」
1967年、札幌の小さな家具店から始まった挑戦。
米国視察で「日本の住まいを豊かにしたい」と決意し、
「製造物流IT小売業」という世界でもまれな垂直統合モデルを構築。
中間マージンをゼロにし、数値で経営し、アジア11カ国に展開中。
ニトリの本質は、
“「仕組み」で価格を下げた者が、最も長く勝ち続ける”こと。
副業においても同じ。
構造でコストを下げ、数値で判断し、隣接市場に踏み出す人が、
「お、ねだん以上。」の価値を作り続けます。
次回は「カインズ」。
ベイシアグループの中核、ホームセンター業界売上No.1のカインズ。
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