副業先生

【ビジネス事例 Lesson 110】Nestlé──158年売れ続ける「選択と集中」と栄養シフトの成長設計図

BUSINESS CASE SERIES ─ LESSON 110

Nestlé──158年間売れ続ける理由
「ポートフォリオ経営」と「栄養シフト」が
生み出す1,000億フラン企業の成長設計図

世界最大の食品・飲料企業Nestléが実践する「選択と集中」と「健康価値への転換」は、副業でも今すぐ応用できる普遍的なビジネス戦略だ。

🔗 Nestlé公式サイト(www.nestle.com)

📌 前回のおさらい

前回のLesson 109では、コングロマリット企業が「選択と集中」によってコア事業の価値を最大化する戦略を学びました。

キーフレーズ:「すべてを持つより、強いものをもっと強くせよ」

今回は「Nestlé」です。世界190カ国で2,000以上のブランドを展開しながらも、売上成長と利益率改善を両立させているNestléの経営戦略から、副業に直結する「ポートフォリオ思考」を解説します。


🏢会社紹介:158年間「食」を制してきた巨人

Nestlé S.A.は1866年にスイス・ヴヴェイで創業。当初は乳児用粉ミルクを開発したHenri Nestléの事業からスタートし、現在は世界最大の食品・飲料企業として君臨しています。KitKat、Nescafé、Maggi、Perrier、Purinaなど誰もが知るブランドを擁し、2024年の年間売上高は913億スイスフラン(約14兆円)に達します。

従業員数は約27万人、世界190カ国以上で事業を展開。コーヒー、ペットフード、栄養・健康食品、水・飲料、乳製品、菓子など多岐にわたるカテゴリーを持ちながら、「Good food, Good life」を企業理念に掲げています。

913億2024年売上高(CHF) 190+展開国数 2,000+保有ブランド数

⚙️問題:肥大化したポートフォリオと成長鈍化の危機

2010年代後半、Nestléは深刻な経営課題に直面していました。巨大化したゆえの「何でも屋」状態が、むしろ成長の足かせになっていたのです。

  • 2000以上のブランドを抱え、リソース配分が分散。戦略的優先順位が不明確になっていた。
  • 「健康・栄養」トレンドの高まりにもかかわらず、砂糖・塩分過多の旧来型製品への依存が続いていた。
  • アクティビスト投資家(第三者点検ファンド)からの株主圧力が強まり、2017年には物言う株主Dan Loebのサード・ポイントが約30億ドル分の株式を取得し、抜本改革を要求。
  • 有機成長率(オーガニック成長率)が2〜3%台に低迷。市場平均を下回る成長が続いた。

“Nestléは世界一の食品会社だが、そのポテンシャルを十分に活かせていない。ポートフォリオの見直しと資本効率の改善が急務だ。”

── Dan Loeb(サード・ポイント創業者)、2017年書簡より

🧭対策①:ポートフォリオの「選択と集中」──売るものを決める勇気

2017年にCEOに就任したMark Schneiderが打ち出した最初の施策は、「成長カテゴリー以外は売却する」という大胆なポートフォリオ再編でした。

❌ 旧:なんでも保有

米国菓子事業(Russell Stover等)、スキンケア事業(Galderma)、水事業の一部など、成長率の低い事業を抱え続ける

VS
✅ 新:選択と集中

米国菓子事業をフェレロへ28億ドルで売却。皮膚科事業を分離上場。コーヒー・ペットフード・栄養食品の3領域に資本集中

特に注目すべきはStarbucksとの戦略的ライセンス契約(2018年、71.5億ドル)です。Starbucksブランドの食料品販売権を取得し、Nescaféと組み合わせることでコーヒー事業を劇的に強化しました。「買う」と「売る」を同時に実行したポートフォリオ最適化です。

💡
副業でも同じ。「あれもこれも」と手を広げるより、あなたの強みが活きる1〜2領域に絞り込む「ポートフォリオ整理」が、収益と時間効率を一気に改善します。今すぐ副業メニューをリスト化して、成長しているものだけを残す判断をしてみてください。

🧠対策②:「栄養シフト」──市場トレンドに乗る製品転換

Nestléは「食の健康化」という世界的メガトレンドをビジネスチャンスに変えるため、製品ポートフォリオ自体を健康・栄養方向へ転換する長期戦略を展開しました。

健康シフトの3本柱

① 植物性食品の強化:「Garden Gourmet」ブランドでプラントベース製品を拡充。欧州市場で急成長中の代替肉・乳製品カテゴリーに本格参入。
② 医療栄養食品への進出:「Nestlé Health Science」部門を設立し、疾患管理食や高齢者向け栄養補助食品を展開。2024年売上高は50億フランを超える成長事業へ。
③ 砂糖・塩分削減:2030年までに全製品の60%以上を「より健康的な選択肢」とする目標を設定。製品改良に年間数十億フランを投資。

また、ペットフード事業(Purina)も「ペットの健康」トレンドと連動し、プレミアム化・機能性強化を推進。2024年のPurina事業はNestlé全体の最大成長部門となり、グループの利益率改善を牽引しています。

💡
副業でも同じ。「今売れているもの」より「3〜5年後に売れるもの」に今から対応する先手投資が差別化を生みます。あなたの副業ジャンルで「トレンドの波」に乗れているか、今すぐ確認してみてください。

🚀対策③:「プレミアム化とD2C」──マージンを上げる価格戦略

量を追うのではなく、単価と利益率を上げる──これがNestléの第三の戦略です。コーヒー事業での「Nespresso」はその最たる成功例です。

Nespressoモデル

専用カプセルによる「囲い込み」でリピート購入を仕組み化。年間売上高約65億フランの高利益率事業に成長

🌐

D2C強化

Nespresso公式サイト・アプリを通じた直販比率を拡大。顧客データを蓄積しCRM・パーソナライズを深化

📦

サブスク展開

定期お届け(サブスクリプション)サービスを欧米で展開。LTV(顧客生涯価値)の最大化を実現

“私たちは食品を売っているのではない。人々の生活を豊かにする『体験』を売っている。”

── Mark Schneider(Nestlé CEO)、2023年アニュアルレポートより

💡
副業でも同じ。「安くして数をこなす」より「高単価で少数のリピーター」を作る設計が、長期的に収入を安定させます。あなたの副業にサブスクや継続課金の仕組みを作れないか、という視点で考えてみてください。

解決:3戦略が結実した業績改善の軌跡

2017年から着手した構造改革は、数年をかけて着実に成果を生み出しました。2022〜2023年はインフレ圧力を価格転嫁で乗り越え、2024年も安定した利益水準を維持しています。

17.4%2023年 営業利益率(調整後) +7.2%2023年 オーガニック成長率 約3兆円累計自社株買い額(〜2024年)

一方、2024年は世界的な消費者の節約志向の高まりにより有機成長率が2.2%まで低下し、新たな課題も浮上しています。Nestléは2025年に向けてさらなるブランド売却・コスト削減・イノベーション加速の3点セットで反転攻勢を図っています。大企業でも常に「改善→課題→再改善」のサイクルが続くことは、副業にとっても重要な示唆です。

💡教訓:副業に活かせるNestlé流4つの戦略

1

「捨てる勇気」がポートフォリオを強くする

Nestléは成長率の低い事業を積極的に売却しました。副業でも、時間対収益が低いサービスや案件を整理することが、コア事業への集中を生みます。

  • ▸ 毎月の副業案件を収益性でランク付けする
  • ▸ 下位20%の案件は断るか値上げして整理する

「何をやらないか」を決めることが、最大の戦略です。

2

トレンドの3〜5年先を読んで「仕込む」

Nestléは健康トレンドが本格化する前から植物性食品・医療栄養に投資しました。副業でも今伸びているジャンルの先を読んで、スキルや知識を先行投資することが重要です。

  • ▸ 自分の市場の「次のトレンド」を毎月リサーチする
  • ▸ 今すぐ収益にならなくても、将来伸びるスキルを学び始める

波が来る前にボードを持っていた人が、波に乗れます。

3

「仕組みの収益」を作ってLTVを最大化する

NespressoのカプセルモデルやD2Cサブスクは、一度顧客を獲得すれば継続して収益が入る設計です。副業でも、単発案件依存から「継続収益型」への転換が安定につながります。

  • ▸ 月額顧問・月額コーチングなどの継続課金商品を設計する
  • ▸ 既存顧客へのアップセル・クロスセルの仕組みを作る

毎月ゼロから稼ぐより、積み上がる収益を設計しましょう。

4

外部の「厳しい目」を成長のドライバーにする

Nestléはアクティビスト投資家からの批判を「変革のきっかけ」に変えました。副業でも、顧客・メンター・同業者からの厳しいフィードバックを改善の燃料にする姿勢が大切です。

  • ▸ 定期的に顧客アンケート・満足度調査を実施する
  • ▸ 信頼できるメンターや仲間に「本音の批評」を求める

快適ゾーンへの批判こそが、次のステージへの入場券です。

📋 今日からできるNestlé式 副業改善チェックリスト

副業メニューを収益性でランク付けする

過去3ヶ月の案件を「時間単価」で並べ、下位案件を整理または値上げする

自分の市場の「3年後トレンド」を1つ特定する

業界レポートやSNSのトレンドを調べ、今から準備すべきスキル・知識を洗い出す

継続課金サービスを1つ設計する

月額コーチング・顧問・コンテンツサブスクなど、毎月収益が積み上がる商品を考える

顧客・メンターから「本音のフィードバック」を集める

今月中に顧客アンケートまたは1on1ヒアリングを実施し、改善点を3つ抽出する

🔗 まとめ:Nestléが築いたのは「強みに集中し続ける仕組み」だった

158年の歴史を持つNestléが今なお成長し続ける理由は「ブランド力」だけではありません。成長しない事業を売り、トレンドを先読みして投資し、高単価・リピート型の収益構造を作り、外部の批判すらも変革に変える──この4つの「仕組み」が企業を強くし続けています。副業においても、感覚や努力だけに頼るのでなく、「選択・集中・仕組み化・改善サイクル」の設計が長期的な成功を作ります。

捨てることを怖がらず、仕組みを作り、波の前に準備せよ。それがNestlé流の「永続成長」の本質です。

🔔 次回予告

Unilever

次回Lesson 111では「Unilever」を取り上げます。

📘 Lesson 111:Unilever を読む👇

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Fukugyo-Sensei

20歳で起業。英語を武器に通訳・翻訳で独立し、上海・香港・東京を渡り歩く。会員制バー10年経営、大企業コンサル複数社。48種の副業を構造から分析して気づいたこと──本質がわかれば、方法は選べる。副業を「運任せにしない人」へ届けるメディアです。

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