【ビジネス事例シリーズ Lesson 75】「NEC」── 「防衛」と「DX」で復活を遂げた電機の名門

NEC──
「海底から宇宙まで」
国家の安全を守る技術者集団の生存戦略
顔認証NIST世界No.1、海底ケーブル世界3強、防衛受注5,000億円超。「C&C」の巨人が「安全保障のインフラ」に変貌した125年
🔗 NEC公式サイト(https://jpn.nec.com/)前回のLesson 74では、富士通から「虎の子を売ってDX企業に脱皮する覚悟」を学びました。
営業利益の約5割を稼ぐ新光電気工業すら売却し、Uvanceで「IT企業からDX企業」へ。営業利益率3%→8.6%への進化。調整後当期利益2,409億円は過去最高。
「今稼げている」は「未来も正しい」ではない。「何を作るか」ではなく「何を解決するか」──それが富士通の教訓でした。
日本初の外資系合弁企業── エジソンの弟子が創った125年の巨人
1899年7月17日。
外国資本の直接投資が認められた条約改正の発効日、その初日に日本電気株式会社は設立された。
日本初の外資系合弁企業──それがNECの出自だ。
創設者・岩垂邦彦は、エジソン・マシン・ワークスでエジソンと共に働いた数少ない日本人。
帰国後、米ウェスタン・エレクトリック社との合弁で電話機の製造からスタートした。
「ベタープロダクツ・ベターサービス」── この創業精神は125年後の今も生きている。
1977年、小林宏治社長が発表した「C&C(コンピュータ&コミュニケーション)」は世界のIT業界に衝撃を与えた。
コンピュータと通信の融合を最初に予見し、実行した企業。
半導体、PC、携帯電話で国内シェアトップを席巻し、1980〜90年代には世界のリーディングカンパニーだった。
しかし2000年代以降、それらのハードウェア事業は次々と撤退を余儀なくされる。
社長としての仕事は、短期的な予算の達成だけではなく、このNECという会社をこれから50年、あるいは100年先までも強い会社として存続するために、今何をやらなくてはいけないのかを考え、実行することだ。
問題:「C&Cの巨人」が直面した凋落と再建
かつて世界トップ10の半導体メーカーであり、国内PC・携帯電話でトップシェアだったNEC。
しかし2000年代以降、ハードウェア事業は全て競争に敗れ、撤退していった。
- 半導体事業はルネサスに統合され、2019年までに全株式を売却。世界トップ10から脱落した「失われた半導体」
- 携帯電話は2001〜2004年に国内シェアトップだったが、スマートフォン参入後2013年に事業撤退。フィーチャーフォンの栄光が逆に転換を遅らせた
- 2012年3月期に最終赤字1,103億円を計上。1万人の人員削減を伴う構造改革を発表。「C&Cの巨人」の面影は消えかけていた
- グローバル5G(Open RAN)事業は海外市場の立ち上がりが想定より遅延。成長の柱と位置づけた事業が足踏み
海底から宇宙まで──
NECが守るのは「国家の安全」そのもの
対策①:「生体認証」── 世界No.1を磨き続ける50年の執念
NECの最大の武器は生体認証技術「Bio-IDiom」。
顔認証、指紋認証、虹彩認証──全てでNIST(米国国立標準技術研究所)のベンチマーク世界No.1を獲得。
これほど幅広い生体認証で世界最高精度を持つ企業は、世界でも数社しか存在しない。
この技術のルーツは1968年、郵便番号制度の導入に伴うOCR(光学文字読取装置)の開発に遡る。
「画像から情報を読み取る」技術が、半世紀以上かけて進化し、今日の顔認証・指紋認証に繋がった。
顔認証の研究が本格化したのは2002年。当時のエラー率は10〜20%で、実用化の目処は立っていなかった。
それでもNECは研究を続け、2009年のNIST初参加から5回の世界No.1を獲得するまでに至った。
顔認証と虹彩認証を組み合わせたマルチモーダル生体認証は、100億人を見分ける精度を実現。
東京オリンピック・パラリンピック、世界中の空港、南アフリカの7,000万人規模の国民IDシステム──
NECの「目」は、地球規模で人を見分けている。
副業でも同じ。「世界No.1」は一夜にして生まれない。NECは1968年のOCR開発から50年以上かけて生体認証の世界王者になった。あなたも「これだけは誰にも負けない」という技術を1つ選び、10年磨き続けろ。ニッチでいい。No.1は、時間の積み重ねの中にしか生まれない。
対策②:「防衛・ナショナルセキュリティ」── 国策の追い風に乗る
NECのもう一つの成長エンジンが防衛・航空宇宙・ナショナルセキュリティ事業。
三菱重工や川崎重工が「船・飛行機・戦車」というハードウェアを担うのに対し、NECが担うのは「目・耳・頭脳」だ。
政府の防衛費GDP比2%目標を受け、ANS(エアロスペース・ナショナルセキュリティ)ビジネスユニットは2024年3月期に受注5,000億円超を獲得。
2025年3月期も社会インフラ部門は航空宇宙・防衛の大口案件増加で堅調に推移した。
副業でも同じ。「目に見える成果物」だけでなく「目に見えない安全・信頼」を提供できる人が最も高い単価を取る。NECが国家の「目・耳・頭脳」を担うように、あなたも顧客のビジネスの「セキュリティ・リスク管理・品質保証」を担える存在になれ。「壊れない仕組み」を作る人は永遠に必要とされる。
対策③:「海底ケーブル」と「ITサービス」── 見えないインフラで世界を繋ぐ
国際通信の99%を担う海底ケーブル。
その製造・敷設で世界3強の一角を占めるのがNECだ。
フランスのアルカテル・サブマリン・ネットワークス、米サブコムと並ぶグローバルプレーヤー。
NECの海底ケーブルは地球6周分に到達している。
Google、Metaなどビッグテックが海底ケーブル投資の主役となり、空前の建設ラッシュが到来。
AIブームによるデータセンター需要の爆発が、この流れをさらに加速させている。
「海底から宇宙まで」── NECは文字通り、地球のインフラを物理的に繋いでいる。
NECの売上収益の72%はITサービス事業。
2025年3月期のITサービス売上収益は約1兆9,000億円超、調整後営業利益は2,081億円(前年比24%増)。
行政・金融・医療など公共性の高い領域でDX需要が堅調に伸びている。
NTTとの資本業務提携(約645億円出資、株式4.8%取得)も、5Gとクラウドの協業基盤を強化する布石だ。
副業でも同じ。「華やかな新規事業」に目が行きがちだが、NECの利益の72%はITサービスという「地味だが堅実な本業」が稼いでいる。あなたも「派手な新サービス」の前に、既存サービスの品質と利益率を磨け。基盤が強い人だけが、新しい挑戦ができる。
解決:純利益過去最高── 「安全保障のインフラ企業」への変貌
2025年3月期、売上収益3兆4,234億円(前年比2%減)、営業利益2,564億円(36%増)、純利益1,751億円(17%増・過去最高)。
減収なのに大幅増益── これは収益性の高い事業へのシフトが利益を押し上げた証拠だ。
2026年3月期は調整後営業利益3,100億円(8%増)を計画。
半導体、PC、携帯電話を全て失った「C&Cの巨人」は、
生体認証・防衛・海底ケーブル・ITサービスという「安全保障のインフラ企業」に生まれ変わった。
教訓:NECが教える「替えの利かない存在」になる4つの原則
「替えが利かない技術」を持つ者だけが、景気に関係なく必要とされ続ける。
50年磨けば「世界No.1」になれる── 生体認証が証明した積み重ねの力
1968年のOCRから50年以上かけて、顔認証・指紋認証・虹彩認証の全てでNIST世界No.1を獲得。技術の世界一は、一夜にして生まれない。地味な改良の積み重ねが、ある日突然「替えの利かない存在」に変わる。
- 「これだけは負けない」を1つ選び、10年磨き続けろ
- ニッチでいい──狭い領域のNo.1は、広い領域の3位より価値がある
- 2002年にエラー率10〜20%だった技術が、17年後に世界一。諦めなかった者が勝つ
副業でも、1つのスキルを10年磨けば、その領域で「指名される人」になれる。
「安全」を売る者は永遠に必要とされる── 防衛・セキュリティの構造的需要
防衛費GDP比2%、能動的サイバー防御──国策が構造的需要を生んでいる。NECが担う「目・耳・頭脳」は、景気が悪くても予算が削られない。「安全」に関わる仕事は永遠に需要がある。
- 「便利」を売る仕事は景気に左右される。「安全」を売る仕事は左右されない
- バックアップ、セキュリティ、品質保証──「壊れない仕組み」は最強の商品
- 国策に連動する領域にポジションを取れ
副業でも、セキュリティ監査やバックアップ管理は「絶対に止められない」仕事だ。
「見えないインフラ」を握れ── 海底ケーブル地球6周分の意味
国際通信の99%が海底ケーブル経由。NECはその世界3強。華やかなアプリやサービスの裏側で、物理的に世界を繋ぐインフラを押さえる──これが「替えの利かないポジション」の本質。
- 目立たないが、なくなったら全てが止まる仕事を選べ
- ビッグテックの海底ケーブル投資ラッシュ── インフラ需要は加速し続ける
- 「上に載るサービス」より「下で支えるインフラ」の方が参入障壁が高い
副業でも、顧客のサーバー・ドメイン・SSL管理を押さえた者は、関係を切られない。
「減収増益」は最高の成績表── 質を追求した者が最後に勝つ
NECの2025年3月期は売上2%減なのに営業利益36%増。低収益事業を整理し、高収益事業に集中した結果だ。「売上を増やす」より「利益率を上げる」方が、経営の質は遥かに高い。
- 売上が減っても利益が増えるなら、それは正しい方向に進んでいる証拠
- 「たくさん仕事する」より「良い仕事だけする」方が年収は上がる
- 安い案件を10本受けるより、高い案件を3本受ける方が豊かになる
副業でも、売上よりも「時給換算」で自分の仕事を評価しろ。
📋 今日からできるNEC式 副業改善
□ 「これだけは負けない」スキルを1つ宣言する
NECが顔認証で世界No.1を取ったように、あなたも「この領域では誰にも負けない」と言えるスキルを1つ決めよう。SNSのプロフィールに書けるレベルまで絞り込め。「何でもできます」は「何もできません」と同義だ。
□ 「安全・品質」に関するサービスを1つメニュー化する
サイトのセキュリティ診断、バックアップ体制の構築、品質チェックリストの作成──「壊れない仕組み」を提供するサービスを1つ作ろう。景気に関係なく必要とされる仕事は、安定収入の最強の源泉だ。
□ 案件の「時給換算」を計算し、下位20%を見直す
NECが「減収増益」を実現したように、あなたも全案件の時給換算を計算しよう。下位20%の案件を手放すか、単価を上げる交渉をしよう。「たくさんやる」より「良い仕事だけする」方が、年間利益は上がる。
🔗 まとめ:NECが築いたのは「替えの利かない安全保障インフラ」
半導体、PC、携帯電話── 全て失った「C&Cの巨人」は、
生体認証・防衛・海底ケーブルで「替えの利かない存在」に変わった。
「何でもできる」時代は終わった。
「これだけは誰にも負けない」を持つ者だけが、
景気に関係なく必要とされ続ける。
50年の執念が、世界No.1を作る──
それがNECの125年が証明した真実だ。
Lesson 76:セイコーグループ
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