【経営者の生きざま No.51】永守重信──すぐやる・必ずやる・できるまでやる、世界を制した執念の経営哲学

この人物を取り上げる理由
日本電産(現:ニデック)を1973年に従業員4名・自己資金わずか85万円で創業し、50年で売上2兆円超のグローバル企業へと育て上げた人物が永守重信だ。
大手の後ろ盾もなく、技術も資金も人脈もゼロに近いところからのスタート。それでも彼は世界一にこだわり続け、精密小型モーターの分野で世界シェア約40%を握るに至った。
副業や個人ビジネスを始める多くの人は「資金がない」「時間がない」「コネがない」と言う。しかし永守の出発点は、それ以上に何もなかった。
彼の思考法は、規模の大小に関係なく「個人が事業で結果を出す本質」を貫いている。副業を今まさに動かそうとしているあなたに、必ず刺さるはずだ。
── 永守重信
人生の軌跡
京都府向日市に生まれる。幼少期から「人より努力する」ことを叩き込まれた。職人気質の父のもとで「手を動かし続ける」姿勢を体得。
職業訓練大学校(現・ポリテクニック大学)を卒業後、山科精機研究所に入社。モーター技術を徹底的に学ぶ。「現場でしか身につかない技術」を武器に磨き続けた。
28歳で日本電産株式会社を京都・向日市の自宅裏の小屋で創業。共同創業者3名と合わせて計4名、資本金わずか85万円。「世界一の会社にする」と宣言し、猛烈な営業・開発を開始。
大阪証券取引所・京都証券取引所に株式上場。精密小型モーターで国内トップシェアを確立。「ニッチ×品質×スピード」の戦略が証明され始める。
積極的なM&A戦略で欧米・アジアの企業を次々と買収・再建。「買収した赤字企業を必ず黒字化する」という独自の再建手腕が世界で注目される。買収企業は累計70社超。
社名を「ニデック株式会社」に変更。EV・脱炭素時代を見据えた次世代モーター事業へ大きく舵を切る。80歳に近い今なお現場に立ち、教育改革(永守財団・京都先端科学大学)にも情熱を注ぐ。
思考法①:「すぐやる」の圧倒的スピード主義
永守の経営哲学の核心は「スピード」だ。
彼の口癖として知られる「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」は、単なる精神論ではない。
決断から実行までの時間を極限まで短くすることで、他社が迷っている間に市場を奪い取る。創業当初、大手メーカーが「やらない」と判断した超小型モーターの受注を即座に引き受け、猛烈に開発したことが飛躍の原点だ。
「やるかどうか迷う時間」そのものがロスだと彼は言い切る。副業においても、「準備が整ってから」という発想は致命的な機会損失につながる。
「完璧な準備」を待つな。まず動いて修正せよ。
永守は創業時、工場も設備も整っていない状態で受注を取り、後から作り方を考えた。「受注してから考える」という逆算の行動力が、競合との差を生んだ。ビジネスにおけるスピードは、資金力や人脈を超える最強の武器になり得る。動きながら精度を上げる「アジャイル思考」を体現した経営者だ。
- ▶ サービス内容が「完璧でなくても」まず1件受注してみる。フィードバックが最高の設計図になる。
- ▶ 副業アカウントの発信は「100%の記事」より「60%の記事を2倍の本数」投稿する方が成果が出やすい。
- ▶ 「いつか始めよう」ではなく、今日中に1つの行動(LP作成・DM送信・SNS投稿)を完了させることを習慣化する。
── 永守重信
思考法②:「ニッチトップ」から世界を狙う戦略
永守が最初に選んだのは、「精密小型モーター」というニッチ市場だった。
大手が「利益が薄い」と敬遠する超小型モーターに特化し、品質と技術で圧倒的なシェアを取りに行った。「マーケットが小さくても、そこで一番になれば利益は確実についてくる」という思想だ。
彼は「二番では意味がない。一番になれる場所を選べ」と繰り返す。これは資源が限られた個人・スモールビジネスにとっても、最強の生存戦略だ。
副業でも「何でもやります」では埋もれる。「○○専門家」として小さな領域で圧倒的になることが、長期収益への近道だ。
「広く浅く」より「狭く深く」。ニッチで一番になれ。
日本電産は「小型モーターなら日本電産」という強烈なポジションを確立したからこそ、価格競争に巻き込まれず高い利益率を維持できた。あなたが副業で扱うサービスや情報発信も、ターゲットと専門領域を絞れば絞るほど「選ばれる理由」が強くなる。「40代・女性・在宅・副業」より「40代・理系ママ・Pythonで副業」の方が圧倒的に刺さる。
- ▶ 自分の専門領域を「業種×悩み×属性」で3つに絞り込み、「この人といえば○○」という1行ポジションを決める。
- ▶ サービスメニューを絞ることで、「専門家感」が増し単価が上がる。「何でもできます」は実は最も弱いポジションだ。
- ▶ SNS発信のハッシュタグや記事テーマも、1ジャンルを深掘りし続けることでアルゴリズム・人脈の両方でシェアが高まる。
思考法③:「できない人」でなく「できない仕組み」を変える
永守は買収した赤字企業を次々と黒字に転換してきた。その際、彼は決して「社員が悪い」とは言わない。
「人は変えられないが、仕組みは変えられる」──これが彼の再建哲学の核だ。
トイレ掃除の徹底・整理整頓・時間厳守という基本的な「仕組み」を変えることで、社員の意識と行動が変わり、業績が改善するというサイクルを作り上げた。
また、永守自身について言えば「情熱・熱意・執念」を常に強調する。才能ではなく、やり続ける構造(仕組みと習慣)が成果を決めるという信念だ。
副業でも「やる気が出ない」と悩む前に、仕組みを変えることで結果は劇的に変わる。
意志力に頼るな。「やり続けられる仕組み」を設計せよ。
永守は「情熱・熱意・執念」を経営の三原則に掲げるが、それは根性論ではなく、「情熱が持続する環境と仕組みを作る」ことを指す。毎日同じ時間に動く・進捗を可視化する・小さな達成を積み上げる──こうした仕組みが「継続」を生む。副業で挫折するほとんどの原因は「意志力の弱さ」ではなく「仕組みのなさ」だ。
- ▶ 副業の作業時間を「毎日○時〜○時」と固定化し、カレンダーにブロックする。「空き時間にやる」は続かない。
- ▶ KPI(週◯件投稿・月◯万円売上)を紙に書いて毎朝確認する習慣を作る。可視化が行動を引き出す。
- ▶ クライアント対応・コンテンツ制作・営業の3領域をテンプレート化し、「考えずに動ける状態」を整備する。
── 永守重信
永守重信の本質は「スピード×集中×執念」の三位一体にある。
大きな夢を掲げながら、今日この瞬間に全力で動く──その繰り返しが50年で世界を制した。
資金もコネも才能も関係ない。「すぐやり続ける仕組みを持つ者」が、個人でも組織でも最後に勝つ。
あなたへの問いかけ
- ▶ あなたが「準備が整ったらやろう」と先送りにしていることは何か?今日中にできる最初の一歩は何か?
- ▶ あなたの副業・スキル・発信の中で「これだけは誰にも負けない」と言える1点はあるか?まだないなら、どの領域で作るか?
- ▶ 副業が続かない原因は「やる気」か「仕組み」か?もし仕組みの問題なら、今週中に何を変えられるか?
次回:出井伸之











