副業先生

【ビジネス事例シリーズ Lesson 98】「コーセー」── 「雪肌精」「タルト」で日米を制する化粧品大手

BUSINESS CASE SERIES ─ LESSON 98

コーセー──
「雪肌精」「タルト」で
日米を制する化粧品大手

中国不振を日米でカバー。売上3,228億円を支えるマルチブランド・マルチ地域戦略の全貌。

🔗 コーセー公式サイト(https://www.kose.co.jp/)
📌 前回のおさらい

Lesson 97|マンダム──「行動変容の力」を学びました。

ギャツビーで「お兄さん的提案」により化粧行動を段階的に定着させ、ルシードでミドル市場を開拓し、女性・海外へと事業を広げた。「商品を売る」のではなく「行動を変える」戦略でした。

キーフレーズ:「人は押し付けられると動かない。提案されると動く。」


💡

「美しい知恵」── コーセー1946年の創業から

コーセーは、1946年の創業。
社名は「香」と「世」を組み合わせた造語──「香りで世の中を幸せにする」という思想が出発点だ。

現在は雪肌精・コスメデコルテ・アルビオン・タルトなど多数のブランドを擁する化粧品大手。
2026年には純粋持株会社体制への移行を予定しており、ブランドポートフォリオ経営をさらに加速させる。

❄️
雪肌精
漢方由来の美白ケア。アジアで高い知名度
👑
コスメデコルテ
国内高価格帯の主力。百貨店を中心に展開
🌿
ONE BY KOSÉ
クリニカル発想のスキンケアライン
🌸
アルビオン
グループ会社。50周年を迎えた老舗ブランド
🍑
タルト(Tarte)
2014年買収の米国ブランド。北米で絶好調
🌺
ピューリ社
2024年12月買収のタイブランド。新興国へ
3,228億円 売上高(2024年12月期)
前期比7.4%増
174億円 営業利益
前期比8.6%増
2,000億円 2025-2030年
累計投資計画

⚙️

問題:「中国市場の不振」と一極集中のリスク

コーセーが直面した最大の課題は、中国市場への依存度の高さだった。
市場が変調をきたしたとき、一点集中の脆さが露わになった。

  • アジア地域売上の急減──406億円(前期比23.0%減)。中国での雪肌精ダウントレンドが直撃した。
  • 「アルコール入り」噂の拡散──中国SNSで「雪肌精にはアルコールが含まれている」という噂が広まり、購買が敬遠される事態に。
  • トラベルリテールの減収──免税店経由の売上が落ち込み、インバウンド需要の縮小が影響した。
  • 原価率の上昇──原材料費高騰・物流コスト上昇・円安による仕入れコスト増が重なった。

「一つの市場に依存したとき、
その市場が揺れると会社全体が揺れる。

── マルチブランド・マルチ地域戦略が必要な理由

🧭

対策①:「日本市場の深耕」── 全チャネルで過去最高へ

コーセーの1つ目の戦略は、「足元の日本市場を徹底的に深掘りする」ことだ。
中国が苦しい中、国内はすべてのチャネルで成長を達成した。

日本国内の業績

・日本売上:2,114億円(前期比11.4%増)

・コスメデコルテ:国内過去最高売上を達成

・雪肌精:Number_i(人気グループ)を起用し2桁増収

・アルビオン:50周年。薬用スキンコンディショナーが好調

・百貨店・ドラッグストア・EC──全チャネルで成長

特筆すべきは雪肌精の国内戦略だ。
中国では「アルコール問題」で苦戦しながら、国内では若年層向けキャスティングで新客を獲得。
同じブランドを市場ごとに異なる戦略で動かした。

「遠くの市場」が揺れたとき、「足元の市場」の深さが会社を支える。
コスメデコルテが国内過去最高を出せたのは、長年の「深耕」があったからだ。

副業でも同じ。
新しい集客ばかり追いかけていませんか?
「今いる顧客」をもっと深く満足させることが、最も確実な売上の柱になります。「遠くを見る」前に「足元を固める」。既存顧客への深耕が、最大の安全網です。

🌎

対策②:「タルト(北米)の躍進」── M&Aで中国依存を脱却

コーセーの2つ目の戦略は、2014年に買収した米国ブランド「タルト(Tarte)」の育成だ。
この先行投資が、中国不振の今、最大の救済役になっている。

🇺🇸 北米・欧州・その他
707億円

前期比 +22.3%

タルト過去最高売上

🌏 アジア
406億円

前期比 −23.0%

中国市場が苦戦

タルトの強さは、SNSネイティブなブランド戦略にある。

💄
リップ
北米で高いリピート率を誇る主力カテゴリー
👁️
マスカラ
SNSで拡散しやすいビジュアル系商品で好調
🏆
コンシーラー
北米市場シェアNo.1を達成した看板商品

中国が−23%の中、北米が+22%で補う。
2014年の買収決断が、2024年の危機を救った。M&Aは10年後への投資だ。

コーセーのマルチ地域戦略が示す教訓
副業でも同じ。
収入源が一つだけのとき、その一つが止まると全部止まります。
「別の収入源」を今のうちに育てておくことが、最大のリスクヘッジです。コラボ・別商品・別プラットフォーム──今の余力があるうちに「第2の柱」を作りましょう。

🚀

対策③:「2,000億円のグローバル投資」── 次の10年を買う

コーセーの3つ目の戦略は、苦しい今だからこそ未来へ投資するという大胆な決断だ。
2025〜2030年の5年間で、累計2,000億円の投資を計画している。

2,000億円投資の内訳

M&A・資本提携:600億円──グローバルサウス(新興国)・欧米への参入

生産体制強化:500億円──南アルプス工場への投資

DX・R&D:500億円──デジタル化と研究開発

・2024年12月:タイのピューリ社を買収──グローバルサウス戦略の第一歩

中国市場への対応策も並行して実行中だ。

💙
雪肌精ブルー投入
「クリーンブランド」として噂への対抗策。アルコールフリー処方を訴求
🏪
販路シフト
百貨店→化粧品専門店へ。中国の購買行動変化に対応
🌏
新興国展開
中国一辺倒を脱し、タイ・東南アジアへ多角化
副業でも同じ。
今の利益を「消費」だけで使っていませんか?
利益の一部を「未来への投資」に回す習慣が、数年後の成長を決めます。新しいスキル習得・コンテンツ制作・ツール導入──今の投資が次の柱になります。

成功の方程式:コーセーが示したリスク分散の数字

3,228億円 売上高(2024年12月期)
中国不振でも全体は増収
+22.3% 北米・欧州の成長率
タルトが中国を補った
2,000億円 5年間の投資計画
「次の10年」を今買う

コーセーの戦略を整理すると、こうなる。

日本市場の深耕──コスメデコルテ過去最高・雪肌精2桁増収。足元を固めた
タルト(北米)の躍進──M&Aで獲得した柱が中国不振を補う構造を作った
2,000億円のグローバル投資──苦しい今だからこそ、次の10年に先行投資する


💡

教訓:コーセーが教えてくれた「リスク分散の本質」

コーセーの本質は、「一点に依存しない構造」を意図的に作り続けたことにある。
1

「足元の市場」を深掘りすることが最大の安全網になる

中国が苦しいとき、日本が11.4%増で支えた。遠くを攻める前に、足元を深く耕していたからだ。副業でも、新規開拓より既存顧客の深耕が安定の源泉になる。

  • 既存顧客のリピート率・満足度を数字で把握する
  • 「もっと喜んでもらえること」を1つ追加する
  • 既存顧客からの紹介・口コミを意識して設計する
足元が深いほど、嵐に耐えられる。
2

「複数の収入源」が、一つの不振を吸収する

タルトという第2の柱があったから、中国の−23%を北米の+22%で補えた。副業でも「一本足打法」は危険だ。複数の収入源が互いにリスクをヘッジする。

  • 今の収入源を「市場別・商品別・チャネル別」に書き出す
  • 一つが止まっても生活できるか確認する
  • 「第2の柱」を今の余力があるうちに育て始める
リスク分散は、余裕があるうちにしか始められない。
3

M&A(買収・提携)は「時間を買う」最速の戦略

タルトを1から育てれば10年かかる。2014年の買収で、北米市場への10年分のアドバンテージを手に入れた。副業でも「協業・外注・提携」は同じ発想だ。

  • 「自分が苦手なこと」を得意とする人・サービスを探す
  • コラボ・外注を「コスト」ではなく「時間を買う投資」として考える
  • 提携相手が持つ「顧客・スキル・信頼」を活用する
他力を使う者が、最速で成長する。
4

「今の利益」を「未来への投資」に変える習慣を持つ

苦しい時期にも2,000億円の投資計画を実行するコーセーの姿勢は、「消費」ではなく「投資」の発想だ。副業でも、利益を未来に回し続けた者が5年後に差をつける。

  • 毎月の収益の一定割合を「投資枠」として確保する
  • スキルアップ・ツール・コンテンツ制作に先行投資する
  • 「今は苦しいが未来に効く」投資を一つ決める
今日の投資が、5年後の自分を作る。

📋 今日からできるコーセー式 副業改善

収入源を「見える化」する
今の副業収入を「商品別・チャネル別・顧客別」に書き出す。一つに偏りすぎていないか確認し、第2の柱の候補を1つ書き出す。
既存顧客に「もう一声」かける
新規開拓の前に、今の顧客に追加提案・アップセルができないか考える。コーセーの「足元深耕」と同じ発想で、既存関係から売上を伸ばす。
今月の利益から「投資枠」を決める
売上の何%かを「未来への投資枠」として確保するルールを今日から決める。スキル・ツール・コンテンツ──1つ具体的な投資先を決めて動く。

🔗 まとめ:コーセーが築いたのは「倒れない構造」だ

中国が−23%でも全体が+7.4%増収できたのは、日本・北米という複数の柱があったから。

足元の日本を深耕し、タルトで北米を制し、2,000億円を未来に投じる。
一点に依存しない「マルチブランド・マルチ地域」の構造が、嵐を乗り越える力になった。

「一点集中」は強いが脆い。
「分散」は安定して、強い。
🔔 次回予告

Lesson 99:ロクシタン(L’OCCITANE)

南仏プロヴァンスから世界へ広がった自然派コスメブランド。
なぜ、「ハンドクリーム」1本で世界を制することができたのか?

シグネチャー商品が生む世界観」の秘密を探ります。

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副業先生

Fukugyo-Sensei

20歳で起業。英語を武器に通訳・翻訳で独立し、上海・香港・東京を渡り歩く。会員制バー10年経営、大企業コンサル複数社。48種の副業を構造から分析して気づいたこと──本質がわかれば、方法は選べる。副業を「運任せにしない人」へ届けるメディアです。

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