副業先生

【ビジネス事例シリーズ Lesson 74】「富士通」── 「Fujitsu Uvance」で挑むサービス企業への大転換

【ビジネス事例シリーズ Lesson 74】富士通
BUSINESS CASE SERIES ─ LESSON 74

富士通──
メインフレームの巨人が
「虎の子」を売って掴んだDX企業への脱皮

携帯電話、PC、半導体、スキャナー、空調子会社──全て手放し、Uvanceで「IT企業からDX企業」へ。売上収益3.6兆円の痛みを伴う変身劇

🔗 富士通公式サイト(https://www.fujitsu.com/jp/)
📌 前回のおさらい

前回のLesson 73では、三菱電機から「多角化の精度で勝つ力」を学びました。

FAが凹んでもインフラ・ライフが補う「相殺のポートフォリオ」。エレベーター保守のストック戦略と防衛・宇宙の国策需要。売上高5.5兆円・営業利益3,918億円、いずれも過去最高。

「選択と集中」だけが正解ではない。「何を組み合わせるか」の精度が勝敗を決める──それが三菱電機の教訓でした。


🏢

通信機メーカーから「日本のITの顔」へ── 富士通90年の歩み

1935年。
富士電機製造(古河電気工業とドイツ・シーメンスの合弁)から電話部門が分離独立し、富士通信機製造株式会社が誕生した。
社名の「富士通」は、「士電機」の「信」を組み合わせた造語だ。

戦後、電電公社の通信インフラ整備とともに成長し、1960年代にはコンピュータ事業に参入。
IBMに真っ向から挑み、メインフレームで国内シェアトップクラスに。
スーパーコンピュータ「京」「富岳」で世界一を獲得し、日本のITの象徴的存在となった。

バブル期には事業を一気に拡大。パソコン、携帯電話、半導体、液晶ディスプレイ、空調──
「何でも作る総合電機」の色彩を帯びていった。
しかし2000年代以降、それが重荷になる。

従来型のSIではなく、顧客の経営変革のアジェンダ策定から実装までをリードする商談が生まれている。

── 時田隆仁(富士通 社長)

⚙️

問題:「IT企業のふりをしたメーカー」の限界

2010年代半ば、富士通の営業利益率はわずか3%前後
世界のITサービス企業が10〜20%の利益率を出す中、富士通は「ITの会社」を名乗りながら、実態はハードウェア製造に利益が縛られていた。

  • 連結営業利益の約5割を半導体パッケージ子会社・新光電気工業が稼いでいた。「IT企業」の利益の半分がハードウェア子会社という歪な構造
  • 携帯電話、PC、スキャナー、半導体、空調(富士通ゼネラル)、電池(FDK)──約300の子会社・持分法適用会社が乱立し、経営資源が分散
  • 国内SI(システム構築)事業は官公庁・大企業向けの「受託開発」が中心。クラウド・SaaS型のビジネスモデルへの転換が遅れていた
  • 海外事業は欧州中心だが採算性が低く、構造改革が何年も停滞。ドイツ事業の一部を譲渡するなど撤退戦が続いた

IT企業からDX企業へ──
「作る会社」から
「顧客を変える会社」になる

── 富士通の変革スローガン

🧹

対策①:「虎の子」売却── ハードウェアの全てを手放す覚悟

富士通の構造改革は、「利益が出ていても、コアでなければ売る」という痛みを伴う決断の連続だった。

🔴 売却・撤退した事業

携帯電話端末事業

PC事業(レノボに譲渡)

スキャナー事業(PFU→リコーに売却)

半導体事業(全株式売却)

新光電気工業(約6,850億円でJICに売却)

富士通ゼネラル(パロマグループに売却)

VS
🟢 残した・強化した事業

サービスソリューション(DX支援)

Fujitsu Uvance(社会課題解決型)

モダナイゼーション(基幹システム刷新)

コンサルティング事業(米州で新設)

AI・量子コンピューティング研究

特に象徴的だったのが新光電気工業の売却だ。
連結営業利益の約5割を稼ぐ「虎の子」──それでも売った。
理由は明快。「半導体パッケージはITサービスの中核ではないから」
2015年に売却が示唆されてから実現までに8年。経済安全保障の問題もあり慎重に進められた。

富士通ゼネラル(空調事業・売上の9割がエアコン)はパロマグループへ。
FDK(電池事業)も非中核と位置づけ売却方針を掲げた。
「作る」仕事を全て手放し、「変える」仕事だけを残す──富士通の覚悟は徹底していた。

副業でも同じ。「今、稼げている」仕事でも、将来の方向性に合わなければ手放せ。富士通は営業利益の半分を稼ぐ子会社すら売却した。あなたも「利益率が低い常連案件」を手放す勇気が、次のステージへの切符になる。


🌐

対策②:「Fujitsu Uvance」── 社会課題を解く新しい事業モデル

ハードを捨てた富士通が、成長の柱として打ち立てたのが「Fujitsu Uvance(ユーバンス)」
「あなた(U)を前に進める(Advance)」という意味を込めた造語だ。
従来の「受託開発型SI」から、「社会課題解決型のサービスビジネス」への転換を象徴する。

🏢
Vertical
業種特化型ソリューション。サステナブルな製造・物流・金融・ヘルスケアなど
🔗
Horizontal
業種横断型基盤。AIプラットフォーム・データ連携・セキュリティなど
📈
売上推移
2022年度: 2,000億円 → 2024年度: 4,828億円 → 2025年度目標: 7,000億円

Uvance売上収益は2024年度に4,828億円(前年比31%増)、2025年度には7,000億円を目標に掲げる。
わずか3年で2,000億円→7,000億円の急成長シナリオだ。

注目すべきは、Uvanceが「顧客の経営課題のアジェンダ策定から実装まで」を一気通貫で担う点。
従来の「何を作りましょうか?」ではなく、「何を解決すべきか?」から入る
SIerからコンサルへの脱皮──それがUvanceの本質だ。

副業でも同じ。「何を作りましょうか?」と聞くのをやめろ。「何を解決すべきか?」から入れ。クライアントが「Webサイトを作って」と言ったら、その裏にある経営課題を掘り下げろ。作業者ではなく「課題を定義する人」になった瞬間、単価が変わる。


🔄

対策③:「モダナイゼーション」と「自らのDX」── 会社ごと作り変える

Uvanceと並ぶもう一つの成長軸が「モダナイゼーション」──顧客の基幹システム刷新だ。
日本企業の多くは1990〜2000年代に構築したレガシーシステムを抱え、2025年の崖問題に直面している。
この巨大な刷新需要を富士通は正面から掴みに行っている。
モダナイゼーションのサービス売上収益は2025年度2,310億円を見込む。

One Fujitsu ── 自らのDXで説得力を持つ

富士通は自社のDX「One Fujitsuプログラム」も推進。
グローバルグループベースのERPシステムを構築し、2024年10月に国内サービスビジネスで稼働開始。
さらに年功序列の廃止、社内公募・通年採用、ジョブ型人事制度の導入という人事制度の抜本改革も断行。
「顧客にDXを提案する会社が、自分自身をDXしていない」では説得力がない──
だから会社ごと作り変える。それが富士通の覚悟だ。

海外事業も構造改革が加速。
欧州は採算の低い事業のカーブアウト(切り出し)と地域戦略の見直し。
米州はコンサルティング事業を2024年に新設。
アジア太平洋は採算性の高いビジネスと地域にフォーカスした絞り込み。
「全部やる」から「勝てる場所だけで戦う」へ──2025年4月から国ごとの体制へ変更し、利益体質の確立を図る。

副業でも同じ。顧客に「業務改善しましょう」と提案する前に、自分の業務を改善しろ。請求書の自動化、タスク管理のデジタル化、ポートフォリオの整理──自分自身がDXの実践者であることが、最強の営業ツールになる。


解決:営業利益率3%→8.6%へ── 「メーカーの面影」が消えた先に

3兆5,501億
売上収益(2025年3月期)
3,072億
調整後営業利益(前年比15.8%増)
4,828億
Uvance売上収益(前年比31%増)

2025年3月期、売上収益3兆5,501億円(前年比2.1%増)、調整後営業利益3,072億円(15.8%増)。
調整後当期利益は過去最高益の2,409億円を達成。
2026年3月期は調整後営業利益3,600億円(過去最高更新見通し)を計画する。

2010年代半ばの営業利益率3%台から、調整後営業利益率は8.6%へ改善。
サービスソリューション単体では売上収益2兆2,459億円・調整後営業利益2,899億円(利益率12.9%)に到達。
携帯電話もPCもスキャナーも半導体もエアコンも全て手放した先に、「DX企業」としての利益率が見えてきた。


💡

教訓:富士通が教える「作る会社から変える会社へ」の4つの原則

「今稼げている」ことは、「未来も正しい」ことを意味しない。
利益の半分を稼ぐ子会社すら売れる覚悟が、次のステージを拓く。

1

「虎の子」を売る覚悟── 利益が出ていても、コアでなければ手放せ

新光電気工業は連結営業利益の約5割を稼いでいた。それでも「ITサービスの中核ではない」と判断して約6,850億円で売却。過去の成功にしがみつかない勇気が、未来の利益率を決める。

  • 「稼げている仕事」と「将来伸ばすべき仕事」は別物
  • 売却で得た資金を成長領域に振り向ける──これがポートフォリオ改革
  • 8年かかっても、方向が正しければ必ず実現する

副業でも、「利益率が低い常連案件」を1つ手放すことで、高単価案件を受ける余白が生まれる。

2

「何を作るか」ではなく「何を解決するか」から入れ── Uvanceの本質

従来のSI「何を作りましょうか?」から、Uvance「何を解決すべきか?」へ。課題を定義する側に立てば、作業者ではなくパートナーになれる。単価も、関係性も、一段階上がる。

  • 「作って」と言われたものを作るのは作業者。課題を定義するのがコンサルタント
  • 顧客のアジェンダを一緒に作る立場になれば、価格交渉力が逆転する
  • Uvanceは3年で2,000億→7,000億。課題定義型ビジネスの成長速度は異常に速い

副業でも、「デザイン作ります」ではなく「売上を上げる体験を設計します」と言え。

3

「まず自分を変えろ」── 顧客にDXを売る前に、自社をDXしろ

One FujitsuプログラムでグローバルERPを構築、ジョブ型人事制度を導入。「DXを売る会社が、自分はDXしていない」では誰も信じない。自分自身が変革の実践者であることが、最強の信頼構築になる。

  • 顧客に提案する前に、自分の業務を改善しろ──それが実績になる
  • 「靴屋の子供が裸足」では売れない
  • 自分のDX体験こそが、最もリアルなケーススタディ

副業でも、自分のWebサイト・SNS・業務フローが整っていないなら、まずそこからだ。

4

「2025年の崖」は機会── レガシー資産が巨大ビジネスの種になる

日本企業の基幹システム老朽化問題「2025年の崖」を、富士通はモダナイゼーションの成長機会に変えた。多くの人が「面倒だ」と思う課題こそ、解決すれば巨大市場になる。

  • 「みんなが嫌がる仕事」にこそ、高い利益率が隠れている
  • レガシーシステムの刷新は一度で終わらない──継続的な需要が生まれる
  • 「古いものを新しくする」仕事は、社会が存在する限り消えない

副業でも、「古いホームページのリニューアル」は永久に需要がある最強のビジネスだ。


📋 今日からできる富士通式 副業改善

□ 「利益は出ているが将来性のない仕事」を1つ特定する

富士通が新光電気工業を手放したように、あなたも「今は稼げているが将来のコアにならない案件」を1つ特定しよう。それを手放すことで、高単価・高成長の案件を受ける余白が生まれる。

□ 次の提案書で「何を解決するか」から書き始める

「制作物の仕様」ではなく「顧客の経営課題」から書き始めよう。「Webサイト制作のご提案」ではなく「御社の集客率を1.5倍にするご提案」。課題起点で書くだけで、受注率と単価が上がる。

□ 自分のビジネスの「レガシー」を1つモダナイゼーションする

手動の請求書処理、Excelの顧客管理、口頭のスケジュール調整──自分の業務に残る「レガシー」を1つデジタル化しよう。それ自体が、顧客への提案の説得力になる。


🔗 まとめ:富士通が証明したのは「捨てる痛み」が生む利益率の進化

携帯電話、PC、半導体、スキャナー、エアコン子会社──全て手放した。
営業利益の半分を稼ぐ「虎の子」すら売り、Uvanceで「DX企業」に脱皮。

「今稼げている」は「未来も正しい」ではない。
「何を作るか」ではなく「何を解決するか」──
その問いの転換が、営業利益率3%を8.6%に変えた。
痛みなき変革は、存在しない。


🔔 次回予告

Lesson 75:NEC

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防衛・5G・生体認証で独自ポジションを築く「もう一つのIT巨人」の生存戦略に迫る。

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Fukugyo-Sensei

20歳で起業。英語を武器に通訳・翻訳で独立し、上海・香港・東京を渡り歩く。会員制バー10年経営、大企業コンサル複数社。48種の副業を構造から分析して気づいたこと──本質がわかれば、方法は選べる。副業を「運任せにしない人」へ届けるメディアです。

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