副業先生

【ビジネス事例シリーズ Lesson 93】「サンマルクカフェ」── 「チョコクロ」で差別化するベーカリーカフェ

BUSINESS CASE SERIES ─ LESSON 93

サンマルクカフェ──
「偶然の失敗作」が生んだ
チョコクロ一本槍の逆転劇

1999年銀座に産声を上げた岡山発のカフェが、スタバでもドトールでもタリーズでもない「焼きたてベーカリーカフェ」という独自カテゴリーを作り上げた。
経営迷走・コロナ危機を乗り越え、プレミアムチョコクロで原点回帰を果たした285店舗の物語。

🔗 サンマルクカフェ公式サイト(https://www.saint-marc-hd.com/saintmarccafe/)
📌 前回のおさらい

前回のLesson 92「タリーズコーヒー」では、スタバとドトールに挟まれた中間で生き残るための「ポジション設計」を解剖した。銀行員が借金7,000万円を背負い、外資系オフィス・病院という「価値を理解する人がいる立地」を狙う逆張り戦略、伊藤園との補完関係、4業態×立地の掛け合わせ──これらが「使命感に裏付けられた比較されないポジション」を作り上げた。

タリーズが「誰がそこにいるか」という人物軸の立地設計で差別化したとすれば、今回のサンマルクカフェは、「何を売るか」という商品軸の差別化でカフェ市場の一角を切り取った。

キーフレーズ:「偶然の失敗作が最強の看板商品になる」──チョコクロ誕生の物語が教えてくれるのは、「完璧な計画」よりも「現場の発見を活かす仕組み」が、ブランドを作るということだ。


🥐

岡山のベーカリーレストランが「焼きたて」を武器に銀座へ乗り込んだ1999年

サンマルクカフェのルーツは、1989年、岡山県に誕生した「ベーカリーレストラン・サンマルク」にある。焼きたてパンと洋食を組み合わせたファミリーレストランとして地元に根付き、パンを作る技術と「食べることへのこだわり」がDNAとして刻まれていった。
その10年後の1999年。「都市部のカフェ市場」に打って出ようと、東京・銀座に「サンマルクカフェ」1号店を開業する。岡山の地方チェーンが、スタバが席巻する東京のカフェ戦線に飛び込んだ瞬間だった。

最初の武器は「コーヒーとあんぱん」という至ってシンプルな組み合わせ。だが、ベーカリーレストランで磨いた「店内でパンを焼く」というオペレーション能力が、他のカフェチェーンにはない決定的な差別化の土台になっていた。
そして2001年、渋谷・井の頭通り店で運命的な出来事が起きる。スタッフが調理の工程を誤り、ひと回り小さくサクサクとしたチョコクロワッサンが焼き上がった。食べてみると──従来とは異なる絶妙な食感だった。「これは新しい名前をつけよう」と、現場スタッフが命名したのが「チョコクロ」だ。

私にとって、銀座の1号店の一番の思い出は「焼きたてですよ」と渡されたバターデニッシュでした。思い返すと、それを最近感じなかったんです。サンマルクカフェの原点は店内で作る焼きたての感動にある。そこに戻ることが全ての答えでした。

鎌田滋之(株式会社サンマルクカフェ社長)── 流通ニュース取材より

チョコクロの大ヒットを受け、原宿にチョコクロ専門店を展開。同時に全国への店舗拡大をスタートした。2015年時点では40都道府県・900店超という最大規模に達した。
しかし2018年、創業者・片山直之氏が病に倒れ、経営は迷走期に入る。ドリア・かき氷・どら焼きなど、ベーカリーカフェとは関係のない商品を次々と投入し、ブランドの輪郭がぼやけていった。2020年のコロナ禍が追い打ちをかけ、業績は危機的な水準にまで落ち込んだ。

285店舗 2025年3月末 サンマルクカフェ
(直営277・FC8)
2029年3月期 370店舗目標
708億円 サンマルクHD 2025年3月期
グループ連結売上高
(前期比9.8%増)
80%超 ベーカリーカフェ市場での
サンマルクカフェのシェア
(国内No.1カテゴリー)

⚙️

問題:「コーヒーもパンも売れる店」を目指した結果、「何の店か分からない」になった

2018年以降のサンマルクカフェが陥ったのは、「強みの希薄化」という典型的なブランドの罠だった。成長を続ける中で「もっと多くの人に来てもらおう」という発想が、コアを薄め、差別化を壊していった。

  • チョコクロ以外のメニューが乱立し、「何の店か」が曖昧に ドリア・かき氷・どら焼き・かつ丼など、ベーカリーカフェとは縁遠いメニューが次々と追加された。「なんでもある店」は、裏返せば「特別な理由がない店」だ。チョコクロを目当てに来ていたコアファンにとっては「なぜこの店でドリアを食べなければならないのか」という疑問符が生まれた。ブランドの強みが稼いだ信頼を、無秩序な拡張が溶かしていった。
  • 店舗数を最大化した結果、不採算店が体力を奪い続けた 900店超まで拡大した店舗網の中に、売上の低い不採算立地が積み重なっていた。固定費の負担が嵩み、既存の好調店が生み出す利益を不採算店が相殺する構図。「数を増やすことが成長」という拡大路線の慣性が、収益構造を歪めた。コロナ禍での強制的な売上減少が、この構造問題を一気に表面化させた。
  • 「焼きたて」の価値が現場から薄れ始めた 創業者が病に倒れた後、「焼きたてパンを届ける」という原点よりも数値目標と新商品投入が優先されるようになった。現場スタッフの士気は下がり、「焼きたてですよ」という一言が持つ力が失われていった。店内製造という最大の強みが、経営迷走と共に現場から意識されなくなっていた。
  • コンビニコーヒー+コンビニパンという「代替の台頭」 2013年以降、コンビニ各社が100円コーヒーと本格パンの組み合わせを強化。「手軽にコーヒーとパンを一緒に」という動機の顧客を大量に吸収された。コンビニに対抗するには「価格」でも「立地の便利さ」でも勝てない。「何が違うのか」を明確に示せないサンマルクカフェは、この波にもまれ続けた。

「なんでもある店」は
「なんでもない店」と同じだ。

チョコクロという一本の軸を失ったとき、
サンマルクカフェは何者でもなくなった。


🏭

対策①:「セルフなのに焼きたて」──他チェーンが真似できない店内製造という壁

サンマルクカフェの根幹にある競争優位は、「セルフサービス形式でありながら、全てのパン・サンドイッチを店内で毎日手作りする」というオペレーション設計だ。
スタバ・タリーズ・ドトールのいずれも、主力のフード商品はセントラルキッチンや外部製造で調達する。効率化・品質均一化・コスト管理の観点から、それが合理的だからだ。
しかしサンマルクカフェは、ベーカリーレストランから引き継いだ「店で焼く」という文化を、セルフカフェというフォーマットに組み込んだ。この「逆張り設計」が模倣困難な参入障壁を生んでいる。

🔥 自社開発オーブンによる遠赤外線焼成

石窯を超えるとも言われる独自開発オーブンを全店に導入。遠赤外線効果でふっくら・しっとりとした焼き上がりを実現。「焼きたて」を日常的に届ける技術インフラ

セルフカフェ初の「一杯立てコーヒー」

オーダーが入ってから豆を挽いて抽出する「一杯立て」を、セルフサービス形式で業界初導入。5カ国ブレンド豆によるやや深煎りの味。コンビニコーヒーとの明確な差別化

🤲 全パン・サンドイッチを店内手作り

チョコクロをはじめ、やみつきドッグ・じゃがバタデニッシュ・ホットサンドまで全て各店舗での手作り。「今日の焼きたて」という鮮度の体験を毎日届ける

🎵 間接照明×ジャズという「空間設計」

セルフカフェでありながら間接照明・ジャズBGMで「最高のひとときを創造する」空間を目指す。価格帯はコンビニより上・スタバより下。「ちょうどいい上質さ」がコンセプト

この設計の最大の強みは、「競合が真似しようとしてもできない」点だ。大手チェーンがセントラルキッチンを廃してセルフ店舗で店内製造に切り替えるには、オペレーション全体の設計変更が必要になる。既存の仕組みがあればあるほど、変更コストは大きい。
サンマルクカフェが「ベーカリーレストランの末裔」として持っているDNAは、後発が資本力で買えないものだ。「焼きたてを届ける技術と文化」──これがサンマルクカフェの参入障壁の本質だ。

副業でも同じ。「大手が真似しようとしてもコスト・構造的に難しいもの」を自分の強みにすることが、価格競争を回避する最善策だ。サンマルクカフェが「店内製造」という大手が踏み込みにくい領域を武器にしたように、副業家も「大企業・大手フリーランスが手を出しにくい細かさ・深さ・個別対応」を価値として設計する。スケールしないことが武器になる領域を探せ。


🎯

対策②:「チョコクロへの原点回帰」──迷走後の再建がV字回復を生んだ構造

2020年代に入り、鎌田滋之新社長が打ち出したのは「ベーカリーカフェへの回帰」という一見シンプルな旗印だった。ドリアもかき氷も撤退。「チョコクロとパン、そして一杯立てコーヒー」という原点に絞り込んだ。
経営者として最も勇気がいる意思決定の一つが「捨てること」だ。拡大してきた商品ラインナップを削ぎ落とすことへの社内抵抗も大きい。しかし鎌田社長は「社員が集まって会社の強みを話し合った答えが『店内製造の鮮度の高いベーカリー』だった」と語る。強みへの回帰は、トップダウンではなく現場からの声だった。

🔴 迷走期の戦略(2018〜)

「なんでもある店」を目指した

ドリア・かき氷・どら焼き等を追加

ブランドの輪郭が溶けていった

不採算店舗が膨らみ続けた

「焼きたて」の価値が現場で薄れた

コアファンの離脱が始まった

回帰
🟢 原点回帰戦略(2022〜)

「ベーカリーカフェ」という軸に絞り込んだ

パン・ホットサンド・チョコクロに集中

「チョコクロ」を旗印として再定義

不採算店舗を整理し生産性を改善

「焼きたてですよ」という体験を復活

既存店売上111%超という回復を達成

回帰の中心にいたのは「プレミアムチョコクロ」という高付加価値商品の開発だ。通常のチョコクロの延長線上に、季節限定・著名ブランドとのコラボという要素を組み合わせ、SNSで話題を作りながら客単価を引き上げた。
2024年3月に販売した「桔梗信玄餅」コラボのプレミアムチョコクロはシリーズ史上最高売上を達成。ハーゲンダッツ・ブラックサンダー・サクマドロップスなど、異業種の著名ブランドとのコラボが続く。

🍡 桔梗信玄餅

山梨銘菓との異業種コラボ。シリーズ史上最高売上を記録した話題作

🍫 ブラックサンダー

国民的チョコレート菓子との共演。チョコ×チョコという究極の組み合わせ

🍦 ハーゲンダッツ

高級アイスとのコラボでスムージー・パフェも展開。客単価アップを牽引

コラボ戦略の巧みさは「チョコクロ」という基盤があってこそ機能する点だ。コラボ相手のブランドが持つ認知・ファン層・話題性を借りつつ、サンマルクカフェの「焼きたてで食べる」という体験価値は変わらない。「核心は変えず、表現を季節ごとに更新する」というサイクルが、SNS時代のプロモーションと見事に噛み合っている。

副業でも同じ。「サービスを増やすほど良くなる」という錯覚に注意。迷走期のサンマルクカフェがドリアを売ろうとしたように、副業家も「このスキルも追加、あの資格も取得」と広げすぎると何者でもなくなる。まず「自分の一番強い一点」を見つけ、そこに集中する。コラボや展開はその後だ。「核心×変化するバリエーション」という設計が、飽きられずに選ばれ続ける仕組みを作る。


🏪

対策③:「不採算整理→再拡大」──量より質のフェーズ転換で生産性を取り戻す

V字回復のもう一つの柱は、勇気ある撤退と選択的再拡大だ。最大900店超あった店舗網を、不採算立地から順次撤退させ2025年3月時点で285店舗まで縮小。一見「後退」に見えるこの判断が、1店舗あたりの売上水準を劇的に改善させた。
サンマルクHDの決算資料によれば、1店舗あたりの平均月商はコロナ前(FY20/3)を100とした場合、FY25/3時点で120まで回復・改善している。総店舗数は減っても、稼ぐ力は拡大した。

🔑 「量の最大化」から「質の最大化」へのフェーズ転換

フェーズ1(拡大期):店舗数を増やすことで売上総額を増やす。900店超まで拡大。しかし不採算立地の蓄積が固定費を圧迫し始め、1店舗あたりの収益性が低下した。

フェーズ2(整理期):2018年〜2024年にかけて不採算店舗を段階的に閉店整理。セルフレジ導入によるオペレーション効率化も同時並行で推進。「店舗数が減っても既存店売上が111%」という体力の回復を実現。

フェーズ3(選択的再拡大期):2026年3月期より出店を再開。6年8ヶ月ぶりに直営の路面店(大阪・本町信濃橋店)を出店。2029年3月期に370店舗を目指す段階的な回復を計画。「採算の見込める立地への出店」という原則を守りながら拡張する。

このフェーズ転換で重要なのは、「撤退=失敗」ではなく「撤退=体力の回復」という発想の転換だ。不採算店を抱えたまま拡大を続けていれば、好調な店舗が生み出す利益も飲み込まれ続ける。切り離すことで、残った店舗が本来の力を発揮できる。
また同時期に導入したセルフレジは、スタッフの作業をパンの製造・品質管理に集中させる仕組みとして機能した。「人がやるべきこと」と「機械に任せるべきこと」を再定義することで、サンマルクカフェ最大の強みである「焼きたての鮮度」への投資が深まった。

副業でも同じ。「稼働率を上げる=クライアントを増やす」という発想が副業家を疲弊させる。受注数を増やしても、単価が低い・時間がかかる・コミュニケーションコストが高いクライアントが増えるだけでは、収益率は下がる。サンマルクカフェが不採算店を整理して1店舗あたり売上を120%に引き上げたように、副業家も「不採算クライアントを整理して、良質なクライアントへの集中投資」を設計する。量を減らして質を上げることが、持続可能な副業の構造だ。


解決:「ベーカリーカフェNo.1」という独自カテゴリーの確立が最終的な答えだった

サンマルクカフェが選んだ戦略の最大の特徴は、「コーヒーチェーン競争に参加しない」という判断にある。スタバ・タリーズ・ドトールが競うコーヒーの品質・価格・体験の市場ではなく、「焼きたてベーカリーが食べられるカフェ」という独自カテゴリーのリーダーポジションを宣言した。
ベーカリーカフェ市場でのシェアは80%超。比較対象がいないカテゴリーのリーダーは、価格交渉力も高く、顧客のロイヤルティも高くなる。「サンマルクカフェ以外でチョコクロを食べられる場所」がほぼ存在しないことが、最大の競争優位だ。

111% 原点回帰後の既存店売上
(FY25/3中間期)
期初計画102%を大きく上回る
120% 1店舗あたり平均月商
(FY20/3=100比較)
コロナ前を大きく超える水準
370店舗 2029年3月期の目標店舗数
不採算整理完了後
選択的再拡大フェーズへ

チョコクロ誕生のエピソードは、「偶然の失敗作が最強の看板商品になった」という物語だが、その後の展開が示すのは、「現場の発見を活かす仕組みがあったかどうか」の重要性だ。
渋谷2号店のスタッフが「これは新しい名前をつけよう」と動いたこと。それを本社が押しつぶさず、「チョコクロ」として商品化・商標登録したこと。現場の感度と組織の柔軟性が揃ったとき、偶然は必然のヒット商品になる。
V字回復後の再出発で展開する「プレミアムチョコクロ」も、ハロウィン限定の「おばけチョコクロ」は店舗スタッフ出身の若手社員がリーダーシップを取って開発した商品だ。現場を信じ、現場から作らせる文化が根付いている。


💡

教訓:サンマルクカフェが副業家に教える「核心一点×バリエーション」の4原則

サンマルクカフェが25年間で証明したのは「一点の圧倒的な強みを持ち、そこへの回帰を恐れない組織が長期で生き残る」という原則だ。
拡大したら迷走し、絞り込んだら復活した。その軌跡は「コアを守ることへの覚悟」が、変化する市場においても最も合理的な戦略であることを示している。

1

「チョコクロを探せ」──自分だけの「偶然生まれた最強の一点」を発見し磨く

チョコクロは計画されていなかった。失敗から生まれ、現場スタッフが育て、本社が活かした。副業家も「なぜか自分に頼んでくれる理由」「気づいたら褒められること」「時間を忘れて集中できること」の中に、自分のチョコクロが眠っている。意識的に探すより、過去の仕事の「意外な反応が良かった瞬間」を振り返る方が見つかりやすい。

  • 過去のクライアントや依頼者から「特に評価された瞬間」を3つ書き出す
  • 「やったことはないが、試してみたらうまくいった」経験を思い出す
  • 「これは特別でもなんでもない」と思っていることが、他人には希少価値である場合が多い
  • 一度見つけたら、それに名前をつける(チョコクロという命名が大切だった)

チョコクロが「サクサクのチョコクロワッサン」から「チョコクロ」という固有名詞になった瞬間にブランドが生まれた。副業家も自分の強みに「固有の名前」をつけることで、比較されなくなる。

2

「ドリアを売るな」──「もっと多くの人に」という誘惑が強みを薄める

サンマルクカフェの迷走期は「もっと多くの人を取り込もう」という発想がドリア・かき氷・どら焼きを生んだ。副業家も同じ誘惑にさらされる。「このクライアントにも対応できるよう、このスキルも追加しよう」の繰り返しが、「どんな仕事でもやります」という曖昧なポジションを作る。強みの希薄化は気づいた時には手遅れになりやすい。

  • 「今やっている副業の仕事」のうち、コアの強みと関係ないものを一つ特定する
  • 「それを断ったら何が失われるか」を考える──多くの場合、失うものより得るものの方が大きい
  • 「何でも対応できます」のポートフォリオサイトと「これだけに特化しています」のポートフォリオサイト、どちらが問い合わせを呼ぶか想像してみる
  • 「コアと関係ない依頼」の断り方を一つ準備しておく

チョコクロに絞り込んだ後のサンマルクカフェが既存店売上111%に回復したように、副業家も「強みの純化」が収益率を上げる。

3

「プレミアムチョコクロ化する」──核心は変えず、バリエーションで飽きさせない設計

サンマルクカフェはチョコクロという核心を変えず、季節・コラボ・素材のバリエーションで「また来たくなる理由」を作り続けた。副業家も同じ設計が使える。コアのサービスや商品はそのままに、「アウトプットの形」「提供対象」「テーマ」「コラボ相手」を変えることで新鮮さを保てる。

  • コアの強みはそのままに「切り口を変える」:同じスキルでも「業種を変える」「規模を変える」「表現形式を変える」だけで新しいサービスになる
  • 異業種・異カテゴリーのコラボ相手を探す:桔梗信玄餅とチョコクロのように、意外な組み合わせが話題になる
  • 「季節限定・期間限定」という枠を使って試す:失敗してもダメージが少なく、成功すれば定番化できる
  • SNSは「バリエーションの発表台」として使う──商品は変わらなくても「話す内容は毎回新しい」を実現できる

プレミアムチョコクロのハーゲンダッツコラボが「新しいサンマルクカフェを発見した」という感覚を与えたように、副業家も「核心×バリエーション」で「また頼みたい」を設計する。

4

「不採算クライアントを整理する」──量を減らして1件あたりの質を上げる勇気

サンマルクカフェが不採算店舗を閉店整理し、1店舗あたり平均月商をコロナ前比120%に引き上げたように、副業家も「多く受ける」より「良質な案件に集中する」フェーズへの意識的な移行が必要になる。稼働100%で消耗している状態から抜け出すには、何かを手放す決断が要る。

  • 現在の副業案件・クライアントを「時間対収益」で棚卸しする
  • 「時間はかかるが単価が低い」案件から優先的に改善交渉または終了を検討する
  • 「不採算案件終了」で生まれた時間を「高単価案件の質向上」に再投資する
  • 「断ることへの罪悪感」は投資判断から切り離す──サンマルクカフェが店舗を閉めたのは「お客様を裏切る行為」ではなく「残った店舗をより良くする判断」だった

セルフレジ導入でスタッフをパン製造に集中させたサンマルクカフェのように、副業家も「単純作業の自動化・外注化」で生まれた時間を「強みの深化」に使う。量の効率化が、質の向上を生む。


📋 今日からできるサンマルクカフェ式 副業改善

「チョコクロ」を一つ書く──今日、自分だけの「意外と評価が高かった一点」を言語化する

過去の仕事・副業・趣味・特技の中から「褒められた・感謝された・驚かれた」経験を一つ思い出し、具体的に書く。「それが当たり前だと思っていたが、他の人には価値があった」という発見が、自分のチョコクロだ。見つかったら短いフレーズで命名する。「〇〇専門の△△」という形で固有名詞化できると、プロフィールとして使える。

「ドリア」を一つ断る──今月、コアと関係ない仕事を一つ整理または断る練習をする

今受けている副業案件・依頼のうち「コアの強みとは関係ないが断れずにやっている仕事」を一つ特定する。完全に断るのが難しければ、次回更新時に値上げ交渉・条件変更・縮小を提案する。サンマルクカフェがドリアをやめた後に既存店売上が回復したように、「コアに集中する時間が増えること」の価値はすぐに数字に現れる。

「プレミアムチョコクロ」を設計する──今週、コアサービスの「バリエーション展開」を一つ考える

自分のコアサービス・強みに対して「切り口を変えた展開」を一つ考える。対象業種を変える・コラボできる人を探す・期間限定で試す・SNSで発信する切り口を作る。桔梗信玄餅とチョコクロの組み合わせのように「意外だが実は相性が良い」組み合わせを探すのが楽しいポイントだ。試して反応が良ければ続ける、なければ次を試す。

🔗 まとめ:サンマルクカフェが築いたのは「偶然の発見を必然のブランドに変える仕組み」だった

1999年、岡山のベーカリーレストランが銀座に乗り込み、「焼きたてパン×カフェ」という他にない組み合わせを作り上げた。
渋谷2号店での偶然の失敗作が「チョコクロ」となり、25年間のブランドの核になった。

900店超から迷走し、不採算整理を経て285店舗へ。削ることで1店舗あたり売上120%を取り戻した。
プレミアムチョコクロ・コラボ商品・セルフレジという三つの武器で「原点×進化」を実現した。

スタバにもドトールにもなろうとしなかった。
「焼きたてベーカリーカフェ」というカテゴリーを自分たちで定義し、そのシェア80%超を握った。

チョコクロを探せ。ドリアを手放せ。プレミアム版を設計せよ。
偶然の発見を活かす仕組みを作った組織だけが、
「計画」を超えたブランドを手に入れる。

🔔 次回予告

Lesson 94:BEAMS(ビームス)

1976年、原宿の小さな輸入セレクトショップから始まったBEAMSは、「買い付けるだけのバイヤー」から「編集者・発信者・ブランド」へと進化し続けた50年企業だ。

ライフスタイルの提案・クリエイターとのコラボ・BEAMS JAPANによる日本文化の再発見・大量出店せずに「憧れの距離感」を保つブランド戦略。副業家にとっての「キュレーターとして稼ぐ設計」への転用法。

関連記事

  1. 【ビジネス事例シリーズ Lesson 95】「SHIPS」── …

  2. 【ビジネス事例シリーズ Lesson 11】レッドブル──「市場…

  3. 【ビジネス事例シリーズ Lesson 43】「Adobe」── …

  4. 【ビジネス事例シリーズ Lesson 66】「カインズ」── I…

  5. ビジネス事例シリーズ 【Lesson 0】「世界のビジネスから学…

  6. 【ビジネス事例シリーズ Lesson 25】サイボウズ ── 「…

副業先生

Fukugyo-Sensei

20歳で起業。英語を武器に通訳・翻訳で独立し、上海・香港・東京を渡り歩く。会員制バー10年経営、大企業コンサル複数社。48種の副業を構造から分析して気づいたこと──本質がわかれば、方法は選べる。副業を「運任せにしない人」へ届けるメディアです。

ページ上部へ戻る